特殊部隊にいた文在寅、韓国の軍事的自立を追求 後継にも影響か
来年5月の退任を前に、北朝鮮との画期的な関係改善に向けた文大統領による最後の努力がどのような結果をもたらすにせよ、文政権が取り組んでいる軍備強化は今後長期にわたる遺産になりそうだ。写真は9月、国連総会で演説する文大統領。ニューヨークで代表撮影(2021年 ロイター)
ソウルで開催された過去最大規模の兵器展示会に、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は20日、戦闘機の後部座席に乗って登場した。北朝鮮との和平実現に熱心なリーダーというイメージとは程遠い演出だ。
文政権のもとで、韓国は歴代の保守政権が承認した軍事プログラムの多くを継承しただけでなく、ただでさえ巨額だった防衛予算は過去最高を更新し、さらには自国のミサイル開発プログラムに対する米国による制約の解除に向けた交渉も進めた。先進的な兵器を数多く揃える中で、韓国初の航空母艦を建造する計画も発表している。
来年5月の退任を前に、北朝鮮との画期的な関係改善に向けた文大統領による最後の努力がどのような結果をもたらすにせよ、こうした軍備強化は今後長期にわたる文政権の遺産になりそうだ。
これはリベラル派の文大統領による朝鮮半島和平に向けた取り組みとは矛盾するように映る。北朝鮮は、こうした軍備強化は、韓国とその同盟相手である米国が示す敵対的な不誠実さの一例だと指摘している。
だが、当局者やアナリストによれば、文大統領の主要な動機の1つは、米国との同盟関係における自立性を高めること、そしていずれは戦時下での韓米合同軍の作戦指揮を韓国側が担いたいという願いであり、そのためであれば北朝鮮を刺激するリスクはやむをえないと考えてきたように見えるという。
韓国政府の外交関係者の1人は、「文政権が2019年に米国から購入したF35戦闘機を披露したときは不思議に思った。南北対話を推進したいと望む一方で、北朝鮮をひどく怒らせるのを分かっていながら、なぜこうした動きに出るのか」と語る。「けれども、しばらく経つと、自立的な国防という文大統領のコンセプトにおいては、計画したことは何があろうとも遂行するのだと理解した」
平和条約ではなく休戦協定によって終結した1950─53年の朝鮮戦争以降、新たな戦闘が勃発した場合には、約2万8500人を朝鮮半島に駐留させる米軍が、数十万人規模の韓国軍の指揮を執ることになっている。
文大統領は韓米合同軍の指揮権を確保することを主要目標に据えていたが、コロナ禍その他の問題により検討が遅れたため、残されたわずかな任期の間にそれを実現することは不可能になった。
しかし前述の外交関係者によれば、文大統領は「後継の大統領が誰になろうと、軍備強化を通じて、将来的な指揮権の移行に向けた地ならしを続ける決意を固めたように見える」という。この関係者は、外交上センシティブな話題のため、匿名を条件に取材に応じた。