インド首都圏、抗体保有率97%を突破 しかし「集団免疫とはいえない」と政府筋
97〜98%に抗体が認められたが...... REUTERS/Amit Dave
<ワクチンに加え、市中感染が押し上げたか。しかし現地は、集団免疫の判断に慎重姿勢を示す>
インド当局は10月28日、デリー首都圏における新型コロナウイルスの抗体保有率を発表した。成人の97%以上が抗体を保有するという、極めて高い水準となっている。デリー首都圏のサティエンドラ・ジャイン保健相が記者会見の場で明かした。
この数字は9月24日からデリーで行われた、新型コロナウイルスの大規模な血清疫学調査の結果を集計したものだ。現地では定期的に検査が実施されており、今回で6回目となる。合計2万8000点の血液サンプルが採取され、これまでで最大の規模となった。
血清抗体検査の結果、インドの成人にあたる18歳以上の市民では、97〜98%に抗体が認められた。18歳未満では88%であった。280ある行政区別の割合では、もっとも数字の低い区でも85%以上となっている。男女別では、女性の方が男性よりも抗体保有率が高い傾向が確認された。
ワクチン接種の有無でみると、接種済み集団の抗体保有率は97%、未接種集団では90%となった。ある政府関係者は、抗体保有率の高さがワクチンの効果によるものかについては断言できないと述べている。市中感染などにより、ワクチン以外のルートで抗体を獲得した市民が多く存在する可能性がある。
インドでは4月から5月にかけて深刻な第2波に襲われたが、今回の調査は第2波後の初の調査となる。タイムズ・オブ・インディア紙によると、1月に行われた前回調査の段階ですでに約56%が抗体を保有していた。
集団免疫の判断、現地は慎重姿勢
今回の発表を受け日本国内では、デリーが集団免疫を獲得した可能性に触れる報道が出ている。集団免疫とは、人口の一定割合がウイルスに対する免疫を持つことにより、流行が起こりづらくなる状態を指す。結果、抗体を持たない人々も、間接的にウイルスの脅威から保護されることになる。
5月のインドでは、1日あたり最大40万人超の新規感染が報告されていた。その後急減に転じ、デリーに限ると8月以降、日ごとの新規感染者数が100人以下と低い水準を保っている。このことも、集団免疫が達成されたのではないかとの見方を後押しした。
一方で、現地メディアの受け止め方はより冷静だ。ヒンドゥスタン・タイムズ紙は「血清陽性率の上昇にかかわらず、デリーでの集団免疫は達成されていない」との見方を報じた。また、政府関係者はインドPTI通信に対して「このような高い水準の血清陽性率にもかかわらず、デリーが集団免疫を獲得したと言うことはできない」とコメントしている。複数の現地有力紙がこれを報じた。
英インディペンデント紙も、集団免疫獲得との判断に慎重な姿勢だ。同紙は専門家の予測として、デリーが今後すぐに壊滅的な被害に見舞われることはないだろうと述べつつ、今後出現する変異株によってはこの限りではないとして警戒を促している。