最新記事

中国

恒大救済企業の裏に習近平の大恩人の影が

2021年10月14日(木)21時56分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
恒大集団本社

債務危機にある恒大集団 Aly Song-REUTERS

債務危機に陥っている恒大集団傘下の恒大物業を購入することになった企業は、かつて習近平父子を助けた葉剣英系列が関係していた。恒大を救済しないがソフトランディングさせたい習近平の狙いが水面下で動いている。

香港証券取引所での取引を一時停止した恒大集団と恒大物業

10月4日、債務危機に陥っている不動産大手の恒大集団とその傘下の恒大物業が香港証券取引所での取引を一時停止した。恒大物業の51%以上の株を、同じく不動産大手の合生創展が買収する方向で交渉を始めたからだ。したがって合生創展を含めた3社の取引が一時止まっている。

物業というのは不動産の管理を行う業務のことで、最初に報じたのは第一財経だ。同時に合生創展自身も取引の一時停止公告を出したので、この事実は間違いのないものと判断される。

広東省には「合生創展(00754.HK)、碧桂園(02007.HK)、中国恒大(03333.HK)、富力地産(02777.HK)、雅居楽(03383.HK)」という五大不動産開発企業(ディベロッパー)があって、これを「華南の五虎」と称する。

10月12日の中国情報においても、同様のことが報道されているので、まだ交渉中のようだ。恒大物業の株の60%を恒大集団が持っているので、それをどこまで手放すのか、またどれくらいの値引きをするのかなどに関して交渉しているものと思われる。

第一財経の報道では、なぜ、よりにもよって「華南の五虎」のうちの、最も低調な合生創展が「火中の栗を拾ったのか」という疑問を呈しているが、筆者は、合生創展の持ち主の朱孟依という人物が、習近平父子の大恩人であった葉剣英と関係しているからではないかと思っている。

実は、朱孟依氏は合生創展以外にも、珠江投資集団の創始者で、この珠江投資集団はもともと、法人代表が朱孟依であった「韓江公司」と「葉剣英研究会」が創った企業だ。葉剣英研究会の副会長も朱孟依が務めていた。

つまり、今般恒大を救済しようとしているのは葉剣英に関係する企業だということに注目したい。本稿では、その関係に焦点を絞って、習近平が水面下でどう動いているのか、そして恒大問題を、どのようにしてソフトランディングさせようとしているのかを考察する。

葉剣英と習近平父子

では、葉剣英とはどういう人物で、習近平父子とはどういう関係にあったのかを見てみよう。

葉剣英はもともと毛沢東時代末期の軍事委員会主席で建国元帥の一人だった。

習近平父子との関係は、拙著『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』の<第五章 習仲勲と広東省「経済特区」>の「一 北京に戻ってきた習仲勲」や「四 習仲勲・葉剣英父子の物語と習近平の登竜門」で詳細に分析したように、習近平父子の大恩人だ。

鄧小平の陰謀により1962年9月に反党分子という捏造された事実により失脚した習仲勲(習近平の父)は、1978年2月までの16年間におよび、投獄、軟禁生活などを続け、文化大革命が1976年10月に終わってもなお、自由の身になれなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中