株式インデックス投資、何が良いか──先進国株、新興国株、米国株と日本株、どれを選ぶ?
一方、日本株式インデックスを見てみよう。ITバブル崩壊直前に日経平均株価に100万円投資した場合で、最終残高は206万円と21年間も投資して2倍くらいにしかなっていない。リーマン・ショック直前に日経平均株価に100万円投資した場合はおよそ13年で最終残高が228万円になっており、米国株には見劣りする。
投資を始める時期について、金融・経済危機の最中(図表7:緑色の点B)、つまり最安値のタイミングで投資できればベストのタイミングなのであろうが、金融・経済危機がいつ起きるか、株価の最安がいつなのかは事前には予測できない。人生100年を豊かにするためのお金を効率良く準備したいのであれば、株価の短期的な値動きに一喜一憂し、試行錯誤を重ねて短期売買するよりも、良い株式インデックスを選んで長期投資をして値上がりを待つ方が堅実なのではないかと思われる。
4――株式インデックスのリスク
このように株式インデックス投資に長期投資すると高い収益が期待できるのだが、注意する必要があるのは、株式インデックス投資には値下がりして含み損を抱えるリスクがあり、決して値動きがずっと安定しているわけではないということである。これまで説明してきたそれぞれの金融・経済危機直前に元本100万円を一括投資した場合、2021年9月末までの最低額を示してみた【図表8】。いずれの最低額も当然ではあるが100万円をかなり下回っている。また、各株式インデックス間の値動きの連動性が近年高まってきており、リーマン・ショック直前から投資した場合の各株式インデックス投資の最低額は2009年1、2月末時点と近しい時期にあり、一斉に50万円以下になっている。コロナ・ショック直前から投資した場合も同様で、最低額になったのは2020年3月末で70~80万円程度まで減少している。
元本割れの期間が最も長いのは日本バブル崩壊直前からTOPIXと日経平均株価に投資した場合であり、一時的に20~30万円にまで低下し、今に至るまで約30年間ほぼ元本割れの状態にある。ちなみに、配当を考慮しないプライスリターンインデックスは2021年9月末時点も元本割れしており、配当込みのトータルリターンインデックスの場合で、2020年後半から2021年初頭に元本100万円を回復している。インデックスの選択によっては、長期間に亘って元本割れから回復しないリスクがあることが分かる。各株式インデックスに投資する場合は、金融・経済危機等があると、大きな価格下落によって、元本割れを被る時期がほぼ間違いなくあると覚悟すべきである。