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独占取材

「中国封じ込め策には抜け穴がある」、パキスタン首相独占インタビュー

AMERICA CAN STILL BE A PARTNER

2021年10月7日(木)10時52分
トム・オコナー(本誌外交担当シニアライター)
イムラン・カーン首相

米中両国は協力すべきだと語ったカーン首相(写真は2019年の国連総会) DREW ANGERER/GETTY IMAGES

<アフガニスタンや中国と地理的・戦略的に深く結び付いたパキスタン。カーン首相が語る対米関係と対テロ対策の本音>

本誌は9月にパキスタンのイムラン・カーン首相への単独インタビューを実施した。聞き手は外交担当シニアライターのトム・オコナー、やりとりはeメールで行われた。

なぜいまパキスタンか。この国がアフガニスタンとも中国とも、地理的かつ戦略的に深く結ばれているからだ。カーン首相は自らの目標や南アジアの現況に対する憂慮を率直に語り、アメリカは今後もアフガニスタンに関与すべきだとし、その理由を説明した。この地域でパキスタンはインドと肩を並べる大国だが、タリバン復権後の地域情勢について首相が詳しく語るのは初めてだ。

イムラン・カーンはクリケットの元人気選手で、1992年には母国をワールドカップ初優勝に導いた。引退後の96年に「パキスタン正義運動」を立ち上げて政界に進出。政財界の腐敗や経済の低迷に対する国民の不満を背景に、2018年の総選挙を制して首相の座に就いた。

米軍撤退後のアフガニスタンが再びテロリストの温床に、テロの輸出基地になってしまわないか。国際社会はそれを最も懸念しており、その点はカーンも同感だと言う。しかしタリバンを毛嫌いするのは筋違いだと主張する。

中国との関係では、そもそもアメリカが中国を敵視する「必要はない」と言い、むしろ潜在的なパートナーと見なすべきだと指摘。今のアメリカがパキスタンの仇敵インドに急接近している点については、テロとの戦いでアメリカに協力してきたのはパキスタンであり、その点は今後も変わらないと強調した。

以下はeメール会見の要旨(若干の編集は加えている)。

――アメリカのアフガニスタン撤退が、パキスタンと周辺地域に与える当面の影響をどう考えるか。

米軍撤退後のアフガニスタンは困難な移行期にある。現地政府を米軍が支えるという過去20年の統治形態は終わり、タリバンが全土を掌握したように見える。あの国が一つになるのは(旧ソ連の侵攻以来)40年ぶりのことだ。

つまり、アフガニスタン全土に安全が確立される希望はある。平和なアフガニスタンはパキスタンにとって有益であり、貿易や開発の面で新たな可能性が開ける。

しかし現状は人道上の危機だ。新型コロナウイルスの感染拡大もあるし、長く続いた紛争と従来の政府の失政のせいでもある。この危機の解消が最優先だ。

また新しい政府と協力して、アフガニスタンに潜むテロリスト集団を無力化する必要がある。とりわけ問題なのはパキスタン・タリバン運動(TTP)だ。彼らはパキスタンに対して数え切れないほどのテロ攻撃を繰り返してきた。

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