「メルケル後」のEU、仏マクロンが主導か 独走に不安も
フランス大統領府は、こうした批判についてのコメント要請に応じていない。もっとも複数のフランス政府高官は非公式の場では、ロシアのプーチン大統領との関係も強化するというマクロン氏の戦略がほとんど成果をもたらしていないと認めている。
東欧諸国のある駐仏大使は「彼の対ロシア政策がどういう結果を招くかマクロン氏に言えるなら言いたい。マクロン氏がロシアとの接触を必要としているのは理解する。メルケル氏もそうだった。しかし彼の場合はやり方が問題だ」と一蹴した。
鍵はイタリアとオランダ
メルケル氏が進めた計画の中にも、欧州の深刻な分断につながった案件があったのは間違いない。その1つがロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の建設だ。とはいえ外交関係者によれば、メルケル氏は、マクロン氏が当たり前に繰り広げるごう慢な言い回しは慎重に避けてきた。
パリに拠点を置くシンクタンク、モンテーニュ研究所のジョージア・ライト氏は「フランスには構想はあるのだが、独善的になり過ぎるきらいがある。マクロン氏の指導力は時折、混乱も招くこともある。独仏が足並みをそろえるのは非常に重要だ。マクロン氏の名誉のために言えば、彼自身も実はこれが不十分だと気づいている」と話した。
そのドイツでは26日に連邦議会(下院)選挙が行われ、メルケル氏が属する保守連合の得票率は過去最低に沈んだ。現在は新政権樹立に向けて各党が連立交渉を進めている段階。ただ複数の外交官によると、ドイツの連立交渉の行方とは別に、マクロン氏が今後EU運営で成功を収められるかどうかでは、イタリアのドラギ首相とオランダのルッテ首相が鍵を握る。
ドラギ氏は欧州中央銀行(ECB)総裁の任期中にユーロ圏の危機を救った人物として尊敬を集めている。関係者の話では、マクロン氏は既にこのドラギ氏を取り込むべく、この夏に自身のバカンス地に招待していた。実際にはアフガニスタン情勢の混乱により、この話はなくなったという。
マクロン氏は、緊縮財政を推進する「フルーガル・フォー(倹約家の4カ国)」の結成を実現したルッテ氏への働き掛けも始めている。両者の交流を知る外交官の1人は、かつてマクロン氏がルッテ氏に「あなた方は次第に私のようになってきているし、われわれもあなた方に似てきている」と語ったことを明らかにした。
一方、ロイターが取材した5人の外交高官は全員、今になって多くの欧州諸国がマクロン氏の考えに賛成しつつあるとの見方を示した。以前、欧州企業をアジアや米国のライバルから守るという主張をフランスの単なる思いつきだと冷ややかにみていた国も、中国と米国がより踏み込んだ政策を採用したことで、フランス批判の姿勢を弱めている。
あるバルト諸国の外交官は「マクロン氏はやや過激に見えたが、われわれは彼が推進してきた措置の幾つかはかなり妥当性があることが分かった」と評価した。
EUの中で何かと先頭に立ち目立っていた英国が離脱し、フランスがちょうど来年1月からEUの議長国になることも、変化を後押しするとの声も出ている。
(Michel Rose記者、John Irish記者、Leigh Thomas記者)
【話題の記事】
・誤って1日に2度ワクチンを打たれた男性が危篤状態に
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...