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ミャンマー西部チン州で軍が攻勢 衝突激化、民家100軒超が炎上

2021年10月31日(日)07時33分
大塚智彦
国軍の砲撃や放火で炎上したミャンマー西部チン州の民家

ミャンマー西部チン州では民家100軒以上が国軍の砲撃や放火で炎上した euronews / YouTube

<ASEAN首脳会議で「死者や暴力が報告されており、情勢に懸念を抱いている」との議長声明が出されたばかりのミャンマーで、さらなる人権蹂躙が起きている>

ミャンマー西部チン州で軍が攻勢を強め、地元武装市民組織や少数民族武装勢力との衝突が激化。民家100軒以上が砲撃や兵士の放火で炎上、多くの住民が難をのがれるため隣国インドに逃れていることが現地の情勢を伝える複数の独立系メディアによって明らかになった。

国連などは10月22日に北部カチン州やチン州に数万人の兵士と戦車や各種砲を伴った大規模な軍部隊の移動が確認されたとの情報に基づいて、近く軍による軍事作戦が開始される懸念と警告を表明していた。

ただ、26日から28日にかけてミャンマーも加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会議がオンラインで開催され、日米中豪なども参加する東アジアサミットも関連して開催されることから会議開催中の軍事作戦開始はないといわれていた。

ASEAN首脳会議には軍政トップのミン・アウン・フライン国軍司令官の「首脳格」としての参加が「拒否」されてミャンマーは欠席となったものの、軍事作戦開始はASEAN会議終了後との見方が支配的だった。

それを裏付けるように軍は会議終了後の29日にチン州西部タントランなどで一斉に攻撃を開始したもようだ。

現地NGO事務所も放火炎上

反軍政の立場をとる地元独立系メディアの「イラワディ」や「ミッズィマ」「キッティッ・メディア」などによると、チン州タントラン郡区にあるCB銀行周辺、ザイ地区、ゾンモン地区、ロンティル地区など5カ所から放火された民家などが煙を上げて炎上する様子が29日午後8時ごろに確認され、その数は100軒を超えているとしている。

さらにキリスト教プロテスタント「長老教会」の複数の教会も炎上、焼け落ちたという。

住民や子供の支援にあたるNGO「セイブ・ザ・チルドレン」の現地事務所も放火されて炎上し、約10人の関係者は一斉に郊外に避難せざるを得なかったという。同事務所関係者が地元メディアに語ったところによると、29日に軍による激しい砲撃がタントラン郡区一帯に加えられ、同地区を防衛する武装市民組織「国民防衛隊(PDF)」や少数民族武装組織「チンランド防衛隊(CDF)」との間で激しい戦闘が繰り広げられたという。

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