最新記事

コロナ起源

武漢研究所、遺伝子操作でヒトへの感染力を強める実験を計画していた

Wuhan Lab Wanted to Enhance Bat Viruses to Study Human Risk, Documents Show

2021年9月24日(金)16時20分
メーガン・ロス

同研究所がそれらのコロナウイルスについて、安全手順が不適切なまま、パンデミックを引き起こしかねないような方法で、積極的に研究を行っていたことや、同研究所と中国当局が、その研究活動を秘密にするために尽力してきたことも分かっている。また、新型コロナの最初の感染例は、かつてウイルスの発生源と考えられた武漢の生鮮市場で感染が流行する数週間前に、確認されていたことも分かっている。だがこうした事実はどれも、ウイルスが研究所から流出した決定的な証拠ではない。

DRASTICによる数々の暴露が、彼らに懐疑的だった欧米のメディアや科学界に影響を及ぼすようになると、バイデン米大統領は米情報機関にウイルスの起源を特定するよう命じた。情報機関は8月に報告書を公開したが、ウイルス起源に関する結論は見送った。

今回DRASTICが公開したある文書の中には、エコヘルス・アライアンスへの研究費助成は勧めないというDARPA当局者の意見が記されていた。DARPAは同研究プロジェクトについて、「パンデミックを引き起こす可能性のある、SARSに関連のある新型のコロナウイルスについて、特に感染力が強いことで知られるコウモリの洞窟で研究を行い、アジアに広まるリスクを特定して、モデル化することを目指す」ものだと評価していた。

研究費用の支援要請は却下

DARPAはまた、同研究プロジェクトは既に研究対象とする複数の現場を特定して「準備は順調に進んでいる」と評価した一方で、提案には「幾つか不十分な点」があると指摘。その一例として、DARPAとしては「洞窟で発見された多様な、かつ進化を続けるさまざまな種類のコロナウイルスについて、ワクチン開発の中でエピトープ(抗原決定基)予測が十分にできず、効果的な予防効果を得られないのではないかと懸念している」と述べた。

DRASTICが公開した一連の文書についてコメントを求めたところ、DARPAは本誌に対して、助成申請書を提出した個人や組織が特定されるような情報は共有できないという回答を寄せた。その一方でDARPAは、「これまでエコヘルス・アライアンスや武漢ウイルス研究所と関連のある再委託業者や活動および研究者に、直接的にも間接的にも資金提供を行ったことはない」とも述べた。

本誌はエコヘルス・アライアンスにもコメントを求めたが、本記事の発行時点で回答は得られていない。

<関連記事>
「研究所流出説」を甦らせた素人ネット調査団、新型コロナの始祖ウイルスを「発見」!
【新型コロナ】中国の生物兵器完成を許すな

20250121issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中