最新記事

中国

自民党総裁選4候補の対中政策と中国の反応

2021年9月20日(月)21時04分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

たとえば9月18日の「環球網」は、その日の午後に行われた日本記者クラブでの公開討論会を、記者の質問が終わるやいなや、17:11に<日本自民党総裁選挙公開討論会、日本メディア:河野太郎が中国とは定期的に首脳会談を行うべきと言った>というタイトルで報道している。

相当準備していないと、これだけの早業はなかなか難しい。

もちろん大きく扱っているのは、本コラム冒頭に書いた日中関係に関する発言で、「定期的に首脳会談を行うべき」と「政府間の会談を通して意思疎通を行うことが非常に重要だ」という言葉だ。

この報道の11分後である17:22には、「環球網」は<アメリカが中国に対抗するために日本に中距離弾道ミサイルを配備するのを認めるのか?日本の自民党総裁候補4人は各自の意見を表明した>というタイトルで「河野氏と岸田氏が慎重な態度」、「高市氏が積極的に肯定」、「野田氏が否定」と報じ、野田氏を「ハト派」と持ち上げている。

そもそも9月17日の「環球網」の<派閥の力が弱まり、対中姿勢が異なる、自民党総裁選の"争奪戦"が開幕した>にあるように、中国は「日本を中日間四つの政治原則という正常な軌道に戻し、両国の往来を維持する方向に持って行ける人物」がトップに立ってくれればいいと思っている。他国の選挙にあれこれ言うなと思うが、米中関係が悪い今、中国は日本との関係構築に必死だ。特に半導体関係などアメリカから制裁を受けているために、何としても日本の技術が欲しい。

日本を味方に付けて、何とかアメリカが仕掛ける対中包囲網を崩したいと思っている。

もっとも、9月10日のCCTVの<日本自民党総裁選挙競争激烈>では、「誰がなろうと短命で終わり、日本は回転ドア式首相の時代に戻るだろう」と達観している解説も見られる。

日本は同じ過ちを繰り返すな

日本は中国共産党の誕生から始まって、日中戦争の時も天安門事件の後も、ひたすら中国共産党が発展し、一党支配体制が維持される方向に貢献してきた。その詳細は『裏切りと陰謀の中国共産党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』の第七章四で述べた。

今回の選択も、必ずその方向に動いていく。

米中の力が拮抗している今、日本は最後の決定的な貢献を中国共産党に対してするような道を選んではならない。

中国は言論弾圧を強化していく国であることを、どうか忘れないでほしい。


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら

51-Acj5FPaL.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中