最新記事

台湾

台湾「デジタル民主主義」と中国「デジタル権威主義」の決定的違い

TAIWAN AS THE FUTURE?

2021年9月17日(金)19時55分
メリッサ・ニューカム(全米アジア研究所)

MUHAMMADTOQEER/SHUTTERSTOCK

<中国は、監視されず信頼されない政府。党が国民を監視する。台湾では逆に、市民がテクノロジーを活用して行政に参画しており、その成功は「未来の政治システムになり得ることを世界に示す」>

中国と台湾はそれぞれデジタル国家を目指している。ただし、中国はデジタル権威主義体制として、台湾はデジタル民主主義体制として、だ。

2つのうちデジタル権威主義はより導入しやすく、定義と理解に関する研究も多い。デジタル民主主義については、台湾が最初の明確なモデルを創造しつつある。

国際的なプラットフォーム「オープン・ガバメント・パートナーシップ(OGP)」は2011年に設立され、現在78カ国の政府が参加している。

国際的に国家として承認されてない台湾は、正式な参加を認められていないが、2019年に独自の国家行動計画を策定すると発表した。

台湾のオードリー・タン(唐鳳〔タン・フォン〕)デジタル担当相によると、OGPは「透明性、説明責任、参加、包摂(インクルージョン)など中核的な価値観を提唱し、政府と市民社会の協力と共創を重視する国際的な取り組み」で、「これらは全て、台湾で行っていることと一致する」。

2020年5月には台湾の行動計画の一部として、フレディ・リム(林昶佐〔リン・チャンツオ〕)立法議員(国会議員)らが「オープン・パーラメント計画」を提唱。立法院(国会)の透明性、開放性、参加、デジタル化、リテラシーという5つの主な目標を掲げている。

台湾のオープン・パーラメントやオープン・ガバメントは、「シビックテック」を抜きには語れない。市民社会と技術コミュニティーが協働し、市民がテクノロジーを活用して行政や地域の問題を解決しようという取り組みだ。

台湾にはシビックテックの実例がたくさんある。

新型コロナウイルスの感染拡大が始まった直後にタンが導入したマスクマップ(全国の在庫がリアルタイムで分かるアプリ)や、濃厚接触者を追跡するQRコードアプリ。クラウドソーシングで政策提案に参加できる仕組みもある。

これらの取り組みに携わる人の多くは、g0v(ガブ・ゼロ、台湾零時政府)と呼ばれる官民一体の技術者コミュニティーに所属している。

「『信頼しなければ、信頼されない』のだ」と、タンは言う。

「オープン・ガバメントは、市民の公共活動への参加を促進するだけでなく、相互信頼を育む手段でもある。そのような相互信頼があれば、集団行動の新たな可能性が生まれる」

権威主義との根本的な違い

リムによると、台湾と中国の重要な違いは、台湾ではデータへのアクセス制限などで技術の利用が監視され、コロナ下での権限拡大にも期限が設けられていることだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国最大野党の李代表に逆転無罪判決、大統領選出馬に

ビジネス

独VWの筆頭株主ポルシェSE、投資先の多様化を検討

ビジネス

日産、25年度に新型EV「リーフ」投入 クロスオー

ビジネス

通商政策など不確実性高い、賃金・物価の好循環「ステ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 5
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 6
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 7
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 8
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 9
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 10
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中