囚人だったタリバンに奪われた「拷問」刑務所
Taliban Fighters Once Held as Prisoners in Kabul Prison Now in Charge of Running It
プル・エ・シャルキ刑務所の外を歩く囚人たち(2018年) Omar Sobhan-REUTERS
<ついこの間まで大勢のタリバン戦闘員が投獄されていた悪名高い刑務所は、カブールを陥としたタリバンが解放し、管理している>
アフガニスタンの首都カブール郊外にあるプル・エ・シャルキ刑務所にはかつて、イスラム原理主義勢力タリバンの構成員の多くのが収監されていたが、タリバンがアフガニスタンの実権を掌握した今は、タリバンによって運営されているとAP通信が伝えた。
タリバンは首都カブールを制圧した後、この刑務所を襲撃。看守らを追い出し、囚人を全員解放して施設を完全に支配した。この刑務所は長年、囚人に対する暴力と大量処刑、拷問で悪名高かった。
「当時のことを思い出すととてもひどい気分になる」と、この刑務所に約14カ月収容されていたというタリバンの司令官はAP通信に語った。「あれは私の人生で最も暗い日々だった。今は、私にとって最も幸せな瞬間だ。自由で、恐れることなく外に出ることができたのだから」
この刑務所には、ソ連軍に占領されていた1970年代末から80年代にかけて作られた集団墓地と拷問室がある。アメリカの支援を受けた政府の管理下に置かれたのちも状態はあまり改善せず、劣悪な環境と囚人の詰め込みすぎで悪名高かった。11の監房棟には、建設時の予定人数の倍の囚人が詰め込まれていた。そのなかにはタリバンもいれば、犯罪者もいた。
AP通信の報道は以下のとおり。
過密で劣悪な環境
かつてこの刑務所は、政府に逮捕された何千人ものタリバンであふれかえっていた。タリバンのある司令官は、誰もいない監房が並ぶ通路をゆっくりと歩き、自分がかつて投獄されていた場所を友人たちに見せていた。
タリバンは1カ月近く前に首都カブールを制圧し、20年近くアメリカの支援を受けていた前政権を瓦解させ、タリバンの統治を象徴するような驚くべき新秩序を瞬時に打ち立てた。
名前を明かすことを拒んだこの司令官は、何人もの友人と共に、刑務所を私的に訪れていた。彼は約10年前にクナール州東部で逮捕され、縛られ、目隠しをされたままプル・エ・シャルキ刑務所に連行されたと語った。
アフガニスタン人や世界中の多くの政府は、タリバンのすばやい権力奪取に警戒感を募らせている。1990年代に初めてタリバンが国を支配したときと同様と同じ厳格な統治を行うことを恐れているからだ。だがタリバンの戦闘員にとっては、それは長く激しい戦いの末の勝利であり、山岳地帯で戦争を始めて以来、初めて都会を見るチャンスでもあった。
APの記者に同行したタリバンの警備員の中には、空になった監房に入るのは初めてだという人もいた。窓からぶら下がる布や小さな敷物、水筒など囚人たちが残した雑貨が散らかっている監房を、警備員たちは感慨深そうに眺めた。