最新記事

台湾情勢

台湾・尖閣への中国侵攻に、米軍と自衛隊はどう備えるべきか

POSSIBLE WAR OVER TAIWAN

2021年9月14日(火)17時30分
スコット・ハロルド(米ランド研究所上級研究員)、森 聡(法政大学教授)
自衛隊

写真は自衛隊員と迎撃ミサイル「PAC3」(2017年撮影) Issei Kato-REUTERS

<中国の台湾攻撃があれば、巻き込まれるのは避けられない。日本は長距離ミサイル増強を検討する必要があるだろう>

中国は十数年前から攻撃的姿勢を強めている。その脅威に最も直接的な形でさらされているのが台湾だ。

米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官(当時)は3月に上院軍事委員会で、台湾侵攻の脅威は「今後6年以内」に到来する恐れがあると証言した。2週間後、後任のジョン・アキリーノ次期司令官は「この問題は大方の見方よりもずっと近づいている」と警告した。

4月にはクリストファー・ドッド元上院議員、リチャード・アーミテージ、ジェームズ・スタインバーグ両元国務副長官がジョー・バイデン大統領の要請で台北を訪れ、台湾を守る姿勢をアピールした。中国が武力を行使しようとすれば、ほぼ確実に対抗措置に出るだろう。

この現状を踏まえ、アメリカの専門家は対中戦争の可能性に備えるよう同盟国に求めている。

日米同盟の防衛計画では、日本がどのようにして抑止力を強化するか、必要に応じて長距離ミサイルを保有し、防衛能力を向上させるかを検討の俎上に載せる可能性がある。

中国が台湾に侵攻すれば、日米両国はいや応なく紛争に巻き込まれることになりかねない。習近平(シー・チンピン)国家主席はアメリカのサイバー・宇宙ネットワーク、在日米軍やグアム駐留米軍、自衛隊や日本国内の施設への攻撃を指示することも考えられる。

さらに日米の防衛計画担当者は、尖閣諸島への同時侵攻の可能性も考慮する必要があるかもしれない。この問題では日米の優先度に差があり、同盟に亀裂が入る恐れもある。

【話題の記事】中国の戦闘機が、台湾上空に侵入するペースが過去最高に──危険な「火遊び」の代償

「戦力投射能力」への打撃

米軍と自衛隊は中国軍の攻撃から自分たちを守るためにも、台湾と尖閣に侵攻する中国軍に効果的に反撃し、撃退しなければならない。そのためには、中国軍の総合的な作戦遂行能力に打撃を加える必要がある。

中国軍の攻撃で致命的な損害を受けないように、米軍と自衛隊は軍事基地や施設などの強化とともに防空・ミサイル防衛を一体的に向上させ、受動的・能動的防御を強化する必要があるだろう。

ただし、攻撃を防ぐだけで反撃しなければ、中国軍に圧倒されかねない。中国が台湾と尖閣で軍事作戦を展開するために必要な「戦力投射能力」に打撃を加え、侵攻自体を不可能にするアプローチを検討すべきかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ関税巡る市場の懸念後退 猶予期間設定で発動

ビジネス

米経済に「スタグフレーション」リスク=セントルイス

ビジネス

金、今年10度目の最高値更新 貿易戦争への懸念で安

ビジネス

アトランタ連銀総裁、年内0.5%利下げ予想 広範な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済…
  • 10
    ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中