最新記事

ミャンマー

ミャンマー民主派弾圧を支える、ウクライナの武器輸出──人権団体報告書

2021年9月14日(火)18時13分
セバスチャン・ストランジオ
ミャンマー国軍

「国軍記念日」の軍事パレードに参加した装甲車(3月27日) REUTERS

<ミャンマーへの武器輸出についてはロシアが批判を受けているが、ウクライナも同罪だと人権団体JFMは主張する>

今年2月に起きた軍事クーデター以来、ロシアによるミャンマー軍への多額の武器売却が盛んに報道されている。実際、ロシア政府はミャンマーの混乱を利用して利益を得ようとする意図をほとんど隠そうとしていない。

ロシアのアレクサンデル・フォミン国防次官は3月末、首都ネピドーでの軍事パレードに出席。クーデターに反対する市民約120人が射殺された日に、ミャンマーとの軍事関係強化を約束した。

だが人権団体「ジャスティス・フォー・ミャンマー(JFM)」によれば、ロシアの隣国ウクライナもミャンマーの国軍に武器や関連部品を供給している。

ウクライナの輸出記録やミャンマー当局のリーク文書をもとに作成されたJFMの新しい報告書は、国営企業を含むウクライナ企業が2015年以降、航空機、船舶、戦車の部品をミャンマーに多数送ってきたと指摘する。ウクライナ政府はミャンマーへの武器流入阻止を求める国連総会決議に賛成したが、一部の企業はクーデター後も取引を続けている。

最近では、航空機やミサイルのエンジン製造大手モトール・シーチ社が部品を2度出荷した。1回目は今年2月、最大都市ヤンゴンに拠点を置く空軍の納入業者に機械部品を送った。2回目は5月31日、ターボジェットエンジンの部品を軍調達本部に送っているが、同時期に空軍は「少数民族地域で無差別空爆を増やした」と報告書は指摘する。

ミャンマー国内に工場を設立

こうしたウクライナ企業の部品供給は、「ミャンマー軍の残虐な犯罪を支援するに等しい武器取引の最新事例にすぎない」と報告書は主張。実際、両国の取引は国民民主連盟政権下で始まっている。

18年、両国は軍事技術協力に関する協定を締結。「武器の研究開発、通常兵器の生産、武器および関連機器の供給、第三国での武器の共同販売・マーケティングを含む」7件の協力が盛り込まれた。ウクライナからミャンマーへの主な武器輸出は、航空監視レーダー、装甲兵員輸送車、航空機エンジン、軽戦車などだ。

JFMによれば、19年または20年にはミャンマー国内に工場を設立し、装甲兵員輸送車、軽戦車、自走榴弾砲を国内用および輸出用に生産する契約が締結された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スウェーデン、バルト海の通信ケーブル破壊の疑いで捜

ワールド

トランプ減税抜きの予算決議案、米上院が未明に可決

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、2月50.2で変わらず 需要低

ビジネス

英企業、人件費増にらみ雇用削減加速 輸出受注1年ぶ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中