ミャンマー民主派が軍に宣戦布告 各地で攻撃開始、実質的な「内戦状態」に
ヤンゴン在住の日本人によると、彼の居住地域ではスーパーなどでそれほど大きな混乱は起きていないもののトイレットペーパーなどの生活必需品は品薄になっているといい、市民がそれぞれ「自己防衛」の態勢を取ろうとしていることがわかるという。
ミャンマーでは軍政に反対する公務員などによる「不服従運動(CDM)」が続いており、コロナ渦にも関わらず病院や保健所などの医療機関が正常に機能していない。市民生活は日に日に厳しくなっているというが、軍政打倒のために「耐乏生活もやむなし」のムードが支配的という。
「軍を壊滅させる」と徹底抗戦の姿勢
さらにラー副大統領は「全土でミン・アウン・フライン国軍司令官率いる軍を壊滅に追い込む」として現在の軍政を打倒させることが今回の「宣戦布告」の最終目的であるとするとともに、兵士や警察官に無実の市民を殺戮することを止め、民主組織側に寝返ることも求めている。
現地からの報道によると7日から8日にかけてヤンゴン市内の他に北部サガイン地区や中部マグウェイなどで軍と武装市民などとの間で激しい銃撃戦が起きているという。
これまでのところ軍政側の公式見解は明らかになっていないが、ミャンマー情勢はさらに一段危険なステージに入ったことだけは間違いない。軍政の後ろ盾になっているとされる中国やロシア、さらにすべての勢力による対話を通じて事態打開を呼びかけていた東南アジア諸国連合(ASEAN)や欧米各国や国連がどう対応するのか注目されている。
[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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