タリバン復活の理由、欧米の押し付け以外に「経済的必然」もあった
AN ECONOMIC DEBACLE
生活水準の改善がカギ(首都カブールの野外で日用品を売る男性) OMAR SOBHANI-REUTERS
<トップダウン方式で国家の仕組みを押し付けようとしたことが裏目に出たという指摘があるが、それだけではない。アフガニスタンは高成長を経験した後、経済成長が停滞していた>
アフガニスタンにおける国家建設の試みは明らかに失敗に終わった。
マサチューセッツ工科大学(MIT)のダロン・アセモグル教授が指摘しているように、地域ごとに異なる慣習と規範を持つ国に、欧米諸国がトップダウン方式で国家の仕組みを押し付けようとしたことが裏目に出た面もあったのだろう。だが、原因はそれだけではなく、経済的要因も作用していた。
アフガニスタンは1人当たりの所得が500ドル程度という最貧国だが、問題の本質はそこにはない。所得上昇のスピードが問題なのだ。
革命と内乱に関する研究によると、速いペースで経済成長を遂げている国では政情が安定する。この点は、その国が豊かか貧しいか、民主主義かそうでないかに関係なく見られる傾向だ。
要するに、経済成長は国内の対立を封じ込める効果を持つ。
しかし、高成長を経験した国の国民は、生活水準がずっと上昇し続けるという期待を抱く。成長が停滞したり退行したりして、その期待が裏切られれば、社会不安が増す可能性が高い。
アフガニスタンはこのパターンに当てはまる。2011~12年頃までは経済が急速に成長していたが、この時期を境に成長が停滞し始めたのだ。
それが国民の生活水準に及ぼした影響を正しく理解する上では、GDP(国内総生産)よりも輸入やエネルギー消費のデータに着目したほうがいい。
アフガニスタン国内では工業製品がほとんど生産されていないため、国内で消費される工業製品はほぼ全面的に輸入に頼っている。従って、国内消費の規模を映し出す最良の(もしくは最もましな)指標は輸入額だ。
その点、2001年にタリバン政権が崩壊して以降10年ほどの間に、アフガニスタンの輸入額は10倍近くに増加した。ところが、2011~12年以降は、人口が増え続けているにもかかわらず、輸入額の伸びが停滞している。
これは、国民の生活水準が落ち込んだことを意味する。その結果として、国民の不満も高まっていったのだろう。
エネルギー消費の状況も同様だ。2001年の時点で20%程度だったアフガニスタンの電力普及率は、現在95%に達しているが、近年は普及が停滞している(普及率が100%近くになれば、それ以上、その割合を引き上げることが難しくなるのはやむを得ないことだが)。
国外からの援助が増え続ければ、国民の不満を和らげられるかもしれない。
しかしアメリカは、アフガニスタン国民の生活水準を向上させ続けるのに十分な援助を継続するつもりがなかった。