気候変動による世界初の飢饉が発生か 4年間降雨なく、昆虫で飢えをしのぎ...マダガスカル
今後半年でさらに悪化か
今後の見通しは決して明るくない。例年9月から翌3月までは収穫物の在庫が不足しがちな傾向にあたる。9月からの半年間は、同国におけるペストの流行期とも重なる。国境なき医師団は、すでに例を見ない規模となっている飢餓が今後悪化し、12月までに131万人が飢餓状態に陥るのではないかとの懸念を表明した。
頼りの綱は経済だが、昨今の情勢からこれも振るわない。英インディペンデント紙は、例年であれば観光客で賑わっていたマダガスカルの経済がパンデミックにより悪化しており、さらに国境封鎖のため季節労働も難しくなっていると指摘する。
援助物資にも悪影響が生じている。南部の主要な港が感染症対策で封鎖されていることから、食料の物資は北部の港で荷下ろしされる。英テレグラフ紙の報道によると、港から国内の悪路を通じた陸送に最大で8日前後を要しており、南部地域への供給は滞りがちとなっている模様だ。
国連としても食料配給や衛生設備の向上など支援を行っているが、干ばつが予想を超えて長期化していることから、資金と体制が追いついていないのが現状だ。食料の市場価格は3倍以上に跳ね上がっており、一部地区では食べ物を調達するために土地を手放す人々も現れはじめた。
温暖化による世界初の飢饉か
WFPは、現在マダガスカルで進行中のこの事象が、世界で初めての気候変動による飢饉になる可能性があると指摘している。WFPのスポークスパーソンであるシェリー・タクラル氏は英スカイニュースに対し、「通常私たちが目にする飢餓は、紛争が原因で起きるものです」と語る。争乱ではなく気候変動によって大規模な飢餓が発生するのは異例のことだという。
事態は現在のところマダガスカル島の南部で進行しているのみだが、先進国にとっても他人事ではない。WFPは今夏ヨーロッパや北米などで頻発した大規模な森林火災を挙げ、こうした自然災害が単発の事象に留まらない可能性があると指摘している。
マダガスカルは国連が発表する「気候変動の影響に対して脆弱な国」の上位常連国だ。温暖化の影響が他の国よりも早期に出ているにすぎず、今後過酷な気候条件にさらされる地域は拡大する可能性がある。スカイニュースは本件を、地球規模で進行しつつある気候変動問題の「警鐘」だと報じた。