最新記事

災害

「カトリーナ超え」のハリケーン・アイダがアメリカ南部に上陸

Hurricane Ida 'Most Definitely' Stronger Than Katrina, Hitting in 'Absolute Worst Place'

2021年8月30日(月)17時20分
トーマス・キカ
ハリケーン「アイダ」の上陸で発生した洪水

8月29日、ハリケーン「アイダ」の上陸でルイジアナ州グランドアイルに発生した洪水 Christie Angelette-REUTERS

<「過去170年で最強レベル」とも言われるハリケーン。「最悪のルート」をたどっているとの見方も>

大型ハリケーン「アイダ」は8月29日、アメリカのルイジアナ州に上陸した。当局は過去170年間に同州を襲ったハリケーンの中でも勢力はトップクラスになる可能性があると警告。2005年にアメリカ各地に甚大な被害を出したハリケーン「カトリーナ」を超える勢力になるかも知れないと指摘する専門家もいる。

マイアミ大学のハリケーン研究者、ブライアン・マクノルディはAP通信に対し、アイダは「間違いなく」カトリーナよりも強くなるとの見方を示した。

上陸した際のカトリーナの強さは、5段階に分けたうちの上から3番目に当たる「カテゴリー3」で、最大風速は57メートルだった。一方、上陸時のアイダはカテゴリー4。最大風速は69メートルで、カテゴリー5(風速70メートル以上)の一歩手前だった。

サイズ的にはアイダはカトリーナより小さいものの、進む方角の影響でカトリーナよりも破壊力は強いと見られる。

NOAACHART.jpeg

「アイダはカトリーナよりも絶対に、それも大幅に強くなるだろう」とマクノルディは述べている。「そして、最も勢力が強い時にニューオーリンズとバトンルージュを通過する。どちらもカトリーナの時は(進行方向左の)勢力が弱い側だった」

マクノルディによれば、05年のカトリーナはメキシコ湾から真北に進んでルイジアナ州に上陸した。大きいハリケーンだったからニューオーリンズなど広い範囲を覆い、通過までの時間も長かった。だがニューオーリンズが受けた被害は市のあちこちで(高潮により)堤防が決壊したことが原因で、人災と言ってもいいものだった。たしかに台風の一部はニューオーリンズ上空を通過したが、最も強い部分ではなかったのだ。

病院の屋根が吹き飛ばされる被害も

一方アイダは南東からルイジアナに上陸した。影響を受ける地域はカトリーナよりは狭いかも知れないが、最も強い部分が直接、ニューオーリンズや州都バトンルージュといった大都市を通過することになる。

アイダが上陸した29日には早くも被害の模様が伝えられている。午後4時半すぎの時点で37万2000戸の住宅が停電していたが、6時15分までにその数は53万戸へと急増した。

「ハリケーンは1つとして同じものはない」と、電力会社エナジー・ルイジアナは29日の声明で述べている。「過去に回復までにかかった時間から見て、カテゴリー4のハリケーンの直撃を受けた地域は最長で3週間の、カテゴリー5の場合は3週間を上回る停電に見舞われる可能性がある」

インターネットでも被害の様子を伝える動画が次々と公開された。ニューオーリンズの南にあるメキシコ湾に近い町ガリアーノでは、病院の屋根が吹き飛ばされる様子が撮影された。

セントバーナード郡では、アイダ通過から1時間のうちに広い範囲が洪水に見舞われ、道路が完全に冠水するまでの状況が監視カメラの映像に記録された。

このあたりには重要な工業地域もあり、数十億ドル規模の被害が懸念されているほか、重要な経済活動が止まってしまう恐れもある。そんな中、アイダの予想進路は「最悪」だと指摘する専門家もいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中