最新記事

韓国事情

中国と韓国、文化起源を巡る対立が激化している

2021年8月27日(金)17時00分
佐々木和義

キムチ、端午の節句、鍼治療、オンドル......中韓文化論争が激化している Reuters

<中国と韓国の間で食品等の文化起源を巡る対立が続いている>

韓国の大手食品メーカーが欧州に向けて輸出したインスタントラーメンなどから発がん性物資の代謝産物が検出された。欧州連合(EU)当局が各国に当該商品の回収を通知すると、中国メディアが大々的に報道した。

新型コロナウイルス感染症の影響で世界的に「巣ごもり」生活者が増え、インスタント食品の消費が拡大するなか、中国メディアは韓国メーカーの失速が、中国メーカーの好機になると報じたが、中国と韓国の間で食品等の文化起源を巡る対立が続いている。

韓国インスタントラーメンから発がん性物資検出をめぐって

2021年8月6日、EUの食品飼料緊急警報(RASFF)システムが、韓国の食品メーカー、農心の「海鮮タンメン」と八道の「ラポッキ」から基準値を上回る2-クロロエタノール(2-CE)が検出されたと発表し、欧州各国に商品の回収とリコールの実施を促す通知を行った。2-CEは発がん性物質に指定されているエチレンオキサイドの代謝産物で、2-CE自体は発がん性物質に分類されていない。

韓国食品医薬品安全庁が製造工場の調査を行い、国内用と輸出用の「海鮮タンメン」の原料と輸出用「ラポッキ」の粉末スープから2-CEが検出されたが、摂取しても健康に害を与える量ではないと発表した。農心も国内向けと輸出向けは生産ラインが異なるため国内向けは問題ないと述べたが、同じ工場で生産している以上、安全とは言いきれないと不安視する声が韓国内で上がっている。

RASFFの措置を受け、昨年、キムチ論争の端緒を開いた環球時報が反応した。中国国営メディアの環球時報が英語版のグローバルタイムスに「農心の欧州市場の打撃で中国ラーメンが機会をうかがっている」と題する記事を掲載し、中国メーカーの好機と報じたのだ。中国新聞坊も「韓国ラーメン会社が発がん物質基準値の最大148倍を超える事故を起こした」と題した記事で詳細に報道した。

韓国と中国、キムチの起源をめぐる論争勃発

2020年、中国と韓国のキムチの起源をめぐる論争が勃発した。同年11月、中国四川省眉山市の「泡菜(パオツァイ)」が国際標準化機構(ISO)の認証を受けると、環球時報が「キムチ(泡菜)宗主国、韓国の恥辱」と報じたのだ。「泡菜」は野菜を塩漬けにした発酵食品で、キムチは中国では「朝鮮泡菜」「韓国泡菜」と呼ばれている。

【参考記事】韓国と中国、「キムチ論争」勃発

中国と韓国のメディアが論争を繰り広げ、中韓双方の人気ユーチューバーや駐韓米国大使、国連駐在中国大使が論争に加わった。また中国共産党の中央政治法律委員会が「韓国の『キムチ論争』は文化的な自信が乏しい韓国の被害妄想」と述べるなど両国の軋轢が高まった。

論争が続いていた21年3月、韓国ドラマに「中国産ビビンバ」が登場。中国メーカーの番組内広告だったが、「中国がビビンバの起源まで主張している」という声まで出たほどだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中