中国と韓国、文化起源を巡る対立が激化している
端午の節句、鍼治療、オンドル......中韓文化論争
中国と韓国の文化起源を巡る対立はキムチがはじめてではない。2005年11月、韓国が江原道の「江陵端午祭」をユネスコの人類無形遺産に登録すると、中国は「端午の節句は中国が元祖で、端午祭も中国が起源」だとして反発した。
同年、中国で放送された韓国ドラマ「大長今(日本名・チャングムの誓い)」も論争を引き起こした。主人公の「チャングム」などが施す鍼治療が韓国発祥と思わせる描写になっているという批判が中国内で提起されたのだ。
韓国の東洋医学界が、韓方医学や鍼治療は、百済や高句麗ですでに定着していた独自の技術と主張する一方、中国は魏晋南北朝時代に中国から朝鮮半島に伝わった漢方医学と主張する。
また、中国のインターネットで、韓国の三育物産が「チャングム」を広告に使用して「豆乳の元祖は韓国」と表記した商品を日本などに輸出しているという批判が起き、上海の新民晩報なども豆乳の起源は中国だと主張した。
2011年5月、中国文化部が朝鮮半島の民謡「アリラン」を国家級非物質文化遺産に登録し、また、中国の少数民族である朝鮮族のアリランを世界文化遺産に登録すると明らかにした。韓国政府は北朝鮮と共同で「アリラン」を世界文化遺産に登録する準備を進めていたが、急遽、単独で登録を申請した。
2014年3月、韓国国土交通部が韓国の床暖房「オンドル」を世界無形遺産に登録する考えを示すと、中国が「オンドルは中国北方の農村で使用した火炕と同じ」だと反発した。
翌15年、ユネスコが無形文化遺産の登録数が少ない国を優先させるため、中韓と日本やフランスなど「無形遺産先進国」に自粛を要請し、文化遺産競争は鎮静化した。
そして、21年7月、韓国文化体育観光部は、キムチと泡菜を区別するため、キムチの中国語訳を「泡菜」から「辛奇(シンチ)」に変更すると発表した。しかし、中国の法令で消費者に馴染みのある名称使用が定められており、韓国企業が中国で販売するキムチも「泡菜」と表記する必要がある。
韓国農林畜産食品部が2013年にキムチの中国語名を「辛奇」にすると発表したが、中国で不評だったことから「泡菜」に戻しており、今回も中国内で反発の声が上がっている。中国が韓国発の中国語を受け入れる可能性はほぼなさそうだ。