最新記事

韓国事情

中国と韓国、文化起源を巡る対立が激化している

2021年8月27日(金)17時00分
佐々木和義

端午の節句、鍼治療、オンドル......中韓文化論争

中国と韓国の文化起源を巡る対立はキムチがはじめてではない。2005年11月、韓国が江原道の「江陵端午祭」をユネスコの人類無形遺産に登録すると、中国は「端午の節句は中国が元祖で、端午祭も中国が起源」だとして反発した。

同年、中国で放送された韓国ドラマ「大長今(日本名・チャングムの誓い)」も論争を引き起こした。主人公の「チャングム」などが施す鍼治療が韓国発祥と思わせる描写になっているという批判が中国内で提起されたのだ。

韓国の東洋医学界が、韓方医学や鍼治療は、百済や高句麗ですでに定着していた独自の技術と主張する一方、中国は魏晋南北朝時代に中国から朝鮮半島に伝わった漢方医学と主張する。

また、中国のインターネットで、韓国の三育物産が「チャングム」を広告に使用して「豆乳の元祖は韓国」と表記した商品を日本などに輸出しているという批判が起き、上海の新民晩報なども豆乳の起源は中国だと主張した。

2011年5月、中国文化部が朝鮮半島の民謡「アリラン」を国家級非物質文化遺産に登録し、また、中国の少数民族である朝鮮族のアリランを世界文化遺産に登録すると明らかにした。韓国政府は北朝鮮と共同で「アリラン」を世界文化遺産に登録する準備を進めていたが、急遽、単独で登録を申請した。

2014年3月、韓国国土交通部が韓国の床暖房「オンドル」を世界無形遺産に登録する考えを示すと、中国が「オンドルは中国北方の農村で使用した火炕と同じ」だと反発した。

翌15年、ユネスコが無形文化遺産の登録数が少ない国を優先させるため、中韓と日本やフランスなど「無形遺産先進国」に自粛を要請し、文化遺産競争は鎮静化した。

そして、21年7月、韓国文化体育観光部は、キムチと泡菜を区別するため、キムチの中国語訳を「泡菜」から「辛奇(シンチ)」に変更すると発表した。しかし、中国の法令で消費者に馴染みのある名称使用が定められており、韓国企業が中国で販売するキムチも「泡菜」と表記する必要がある。

韓国農林畜産食品部が2013年にキムチの中国語名を「辛奇」にすると発表したが、中国で不評だったことから「泡菜」に戻しており、今回も中国内で反発の声が上がっている。中国が韓国発の中国語を受け入れる可能性はほぼなさそうだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中