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食虫植物虫の捕食と花粉媒介を共存させるユニークな食虫植物を発見
北アメリカの身近な植物が食虫植物だった Credit: Danilo Lima
<北米西海岸の湿地に生息し、北アメリカの都市近郊にも広く生息する植物が食虫植物であることが初めて確認された>
オモダカ目チシマゼキショウ科イワショウブ属に分類される単子葉植物「ウェスタン・フォルス・アスフォデル」は、米アラスカ州からカリフォルニア州までの北米西海岸の湿地に生息し、夏には、粘着性のある腺毛で覆われた長い茎にブヨやユスリカのような小さな虫がくっつく。
このほど、北アメリカの都市近郊にも広く生息するこの植物が食虫植物であることが初めて確認され、一連の研究成果が2021年8月17日付の「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された。
遺伝子に食虫植物でよくみられる変異があることを偶然発見
加ブリティッシュコロンビア大学ショーン・グラハム教授らの研究チームは、オモダカ目のゲノム解析を行っていた際、「ウェスタン・フォルス・アスフォデル」の遺伝子に食虫植物でよくみられる変異があることを偶然発見した。
そこで、この植物が食虫植物であるかどうかを検証するべく、窒素の安定同位体のひとつ「窒素15」でラベルしたミバエを餌として茎に付着させ、この植物がミバエを消化するにつれて吸収する「窒素15」を追跡した。
この実験の結果、この植物の窒素含有量は周囲の植物よりも総じて少なかったものの、「窒素15」の量は大幅に高かった。研究チームの分析によると、「ウェスタン・フォルス・アスフォデル」は窒素の約64%を捕食した虫から摂取していると推定される。
捕食する虫と送粉者を選り分ける特性を持つ
ハエトリグサなどの食虫植物は、送粉者による花粉の媒介を妨げないよう、虫媒花から離れた位置で虫を捕らえるのが一般的だ。一方、「ウェスタン・フォルス・アスフォデル」は虫媒花の近くで虫を捕食する。
虫を捕食すると、受粉を助ける媒介者が減ってしまうため、一見、虫の捕食と花粉媒介は相反する。しかし、「ウェスタン・フォルス・アスフォデル」は捕食する虫と送粉者を選り分ける特性を持つとみられる。
研究論文の共同著者で米ウィスコンシン大学マディソン校の植物学者トーマス・ギヴニッシュ教授は、「この植物は、腺毛の粘着性がそれほど高くないため、小さな虫だけを捕らえ、送粉者となる蜂やチョウといった大きな虫を逃がしているのだろう」と考察している。