ドングリキツツキの新たな生態が判明 一夫多妻制で繁殖を有利に
兄弟・姉妹が子育てをお手伝い
一夫多妻制以外にもドングリキツツキは、兄弟姉妹が育児に参加するというめずらしい習性で知られている。最大16羽ほどの成鳥が集団でヒナの世話をし、育ったヒナも数年ほど巣に留まる。次の世代として生まれてきた若いヒナの世話をし、育ててから巣立ってゆくのだ。
これに対し自然界の多くの生物は一夫一婦制を取り、営巣や子育てに関しても各ペアが独立して行う。ドングリキツツキのような社会生活は例外的であることから、自然界から淘汰されつつあるのではないかとの考えが生物学界では一般的だった。
バーヴ博士はこうした見解に対し、実は親族の子育てを手助けする行為にも、進化上のメリットがあるのだと説明している。進化学上有利とされる基準のひとつに、いかに集団の遺伝子のなかに自分のDNAをより多く広めることできるか、という観点がある。この観点において、たとえば自分の4分の1の血を引く甥っ子を2羽育てることは、自分の2分の1の血を引く実の子を1羽育てることと等しい意義をもつのだ、と博士は説く。
さらに博士によると、集団での育成により生存率が向上するなど、種全体に遅効性のメリットが発生しているのだという。
既存の考え方においては、親族の子育てを手伝うことは、自身で子孫を残すことができない場合の最後の手段だと捉えられてきた。積極的に共同で営巣するドングリキツツキの習性は、こうした常識とは異なる新たな価値観を提唱するものとなりそうだ。
高い社会性の反面、凶暴な一面も
以上のように共同で子育てにあたるドングリキツツキは、高い社会性を備えた鳥だといえるだろう。一方、コミュニティの支配をめぐり、異常なまでの闘争心をむき出しにすることもある。
通常は2羽から16羽ほどのコミュニティで生活するドングリキツツキだが、ときに何らかの事情で、グループに属する成鳥のオスまたはメスのすべてが死んでしまうことがある。残された繁殖可能なメスまたはオスをめぐり、複数のグループが激しい争いを繰り広げる。
闘いは熾烈そのものだ。加勢した鳥たちは翼を折られ、地面へ墜ちてしまうこともめずらしくない。目をえぐり取られたり、最悪の場合には怪我によって命を落としたりすることもある。米科学技術誌の『ポピュラー・サイエンス』は、ときに40羽もの鳥が争いに加わり、最大で1日10時間、連続4日間ほど血みどろの戦いを展開すると解説している。元のグループは勝ち抜いた集団を受け入れ、新たなコミュニティとして繁殖活動を再開する。
こうした高い戦闘力と優れた社会性をもつドングリキツツキだが、ときに微笑ましい一面を見せることもある。ニューヨーク・タイムズ紙は昨年、うっかり巣を手薄にしてしまうという習性を明かしている。激しい戦闘が発生すると遠くのテリトリーからもドングリキツツキたちが偵察あるいは野次馬に現れるが、移動に大量のエネルギーを消費するうえ、自分たちの本来の巣が手薄となる。争いを見物しているうちに、せっかく蓄えたドングリを奪われてしまうこともあるのだという。
ドングリキツツキは、北アメリカおよび中央アメリカに分布する。計画的な貯蔵にコミュニティ単位での育児にと、さまざまな表情を見せてくれる野鳥だ。