最新記事

アフガニスタン

タリバンとは何者か、なぜ恐れられるのか

A Brief History of the Taliban's Rule in Afghanistan

2021年8月20日(金)18時43分
スー・キム

『アフガニスタン/その文化と政治の歴史』の著者であるトマス・バーフィールドは本誌に対して、「タリバンの究極の目標は、アフガニスタンでイスラム法に基づく統治を行うことだ」と語った。

米ボストン大学の教授(人類学)で、同大学のイスラム社会研究所のディレクターでもあるバーフィールドは、新たなタリバン政権の約束が守られるかどうかについては「全ての人が注目している」と言う。「彼らは以前とは違うし、公に示している姿勢も1990年代とは大きく異なる」と指摘した。

実際、タリバンには単独で行政サービスを提供する能力はなく、政府職員や医療、人道支援などの各種サービスを提供する組織の協力なしには国を統治できないと、バーフィールドは言う。彼らが1990年代に「統治」したカブールは所詮、まともな政府もインフラもない廃墟だった。

それに対して現在のカブールは「500万人の人口を抱える大都市で、政府は安全だけでなく各種サービスも提供しなければならない。タリバンがそれを行うためには、(自分た倒した」かつての敵の協力を仰ぐしかない」と言う。

「世界でも人権弾圧がひどい国」

タリバンは、1992年にソ連の傀儡政権が崩壊した後、1994年までに同国南部で影響力を拡大し、複数の州を制圧。1996年9月までには首都カブールを掌握し、大統領を殺害してアフガニスタン・イスラム首長国を樹立した。

タリバン政権が最初に行ったのが、「コーランの定めに沿った法律の厳格な解釈」で、「女性やあらゆる類の政敵、宗教的少数派の処遇についての無慈悲な方針」が含まれた、とNCTCは指摘する。

米国務省民主主義・人権・労働局が2001年11月に発表した報告書によれば、1990年代後半にタリバンの支配下にあったアフガニスタンは「世界で最も人権状況の悪い国のひとつ」だった。報告書は当時のタリバン政権について、「全ての国民を組織的に抑圧し、個人の最も基本的な権利さえも否定した」と指摘。同政権の「女性に対する戦争はとりわけ恐ろしいものだった」と述べている。

国際的な人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が2020年6月に発表した別の報告書は、当時のタリバン政権による抑圧には「処刑を含む残虐な体罰や、宗教・表現・教育の自由の極端な弾圧」も含まれたと指摘した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中