最新記事

火山

【動画】ヨーロッパ最大の活火山、噴火でさらに伸びていた 伊エトナ火山

2021年8月19日(木)19時00分
青葉やまと

エトナ山の噴火(8月9日)Etna Walk/Marco Restivo/REUTERS

<新たな火口が出現。山頂の位置が移動し、標高も増していた>

今年2月から噴火活動が続くイタリアのエトナ火山が、噴火によって標高を伸ばしていたことがわかった。同じシチリア島内に本部を置くイタリア国立地球物理・火山学研究所(INVG)が衛星画像を分析したところ、2018年に観測されていた記録を31メートル上回り、3357メートルとなっていることが判明した。

エトナ火山は以前からヨーロッパの活火山として最高の標高を誇っていたが、6ヶ月間続く火山活動によってこの記録を自ら塗り替えたことになる。火口付近に噴出物が堆積したことで、火山の上に小さなもうひとつの火山を載せたような形状となっている。

同火山はこれまでにも、活発な活動によって早いペースで標高を変化させている。従来は山の北東部にある火口が最高峰となっており、1981年の測定では標高3350メートルを有していた。その後火口の一部が崩落したことで、2018年の測定では3326メートルにまで縮小している。

etna-comparison-2020-21.jpg

標高が高くなったエトナ山 image: Boris Behncke / facebook


今年2月に始まった今回の一連の火山活動では、これとは別に山の南東部に新たな噴出口が発生した。これまで40年間にわたり最高峰であった北東の火口に代わり、新たな山頂が誕生したことになる。

既知の噴火としては最古の歴史

エトナ山は50キロ四方ほどの広い裾野を持つ活火山であり、その山頂は季節よっては雪で覆われている。こう表現すると富士山のような姿が頭に浮かぶが、外観はなだらかな曲線ではなく、起伏の多いゴツゴツとした形状だ。

この形状は、長い歴史のなかで繰り返した噴火が生み出したものだ。科学ニュースを伝えるネイチャー・ワールド・ニュース誌は、エトナ火山の噴火の歴史は紀元前1500年にまでさかのぼり、現在知られている噴火としては地球上で最も古い歴史を持つと解説している。

その誕生はさらに古く、エトナ火山は今からおよそ30万年前に海底火山として形成された。溶岩流の噴出を重ねることで高さを増していき、長い時間をかけて海面を超え、現在の標高に至ったと考えられている。今でもその表面のほぼ全域を覆っているのは、30万年前に固まった古い溶岩流だ。

美しい火山だが、降灰・轟音被害が深刻に

現在では2月の噴火開始から半年が経つが、火山活動の勢いは衰えるところを知らない。5月を過ぎた頃から噴火はペースを早め、数日間隔にまで活発化している。火口から噴水のように立ち上がる溶岩と噴石は圧倒的な規模で、最大で推定1000メートルの高さに達することもある。溶岩の噴出は8月初めまでの合計で50回を超えた。

Today(Aug19)Spectacular eruption Mount Etna with ash 1km high into the sky, rained on Italian cities


周辺地域では降灰による被害が深刻化している。世界の火山活動情報を報じるボルケーノ・ディスカバリー誌は、風がほとんど吹いていないため、火山の東部および南部地域に非常に多くの灰と噴石が集中的に降っているとの情報を伝えている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA

ビジネス

根強いインフレ、金融安定への主要リスク=FRB半期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 6

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中