韓国の繁華街、外国人旅行者に依存してきた明洞は一人負け
人が消えた明洞の路地 撮影:佐々木和義
<長引く新型コロナの影響で韓国の繁華街の中でも明暗が分かれている。弘大や梨泰院などは人々がわずかながら戻るなか、韓国最大の繁華街である明洞は客離れが続いている......>
新型コロナウイルス感染症の長期化で、韓国の繁華街の中でも明暗が分かれている。韓国不動産院が発表した「商業用不動産賃貸動向」による21年度第2四半期の韓国全土の中大規模店空室率は13.1%で、第1四半期と比べて0.1%増加した。全国の小規模商店空室率は6.4%、首都ソウルは6.5%で前期と変わりない。
ソウル・弘大(ホンデ)の小規模商店空室率は22.6%、梨泰院(イテウォン)は31.9%と平均を大きく上回るが前期から変化はなく、一方、第1四半期に38.3%の空室率を記録した明洞は43.3%まで上昇した。
弘大や梨泰院など、ウイズ・コロナに慣れた人々がわずかながら戻るなか、韓国最大の繁華街である明洞は客離れが続いている。
徐々に人々が戻る弘大や梨泰院
梨泰院は20年5月、大きく落ち込んだ。同月9日、梨泰院のクラブで新型コロナウイルスの集団感染が発生した。感染者や濃厚接触者が、複数の店を訪問していたことが判明すると、市民が梨泰院を避けるようになり、ゴーストタウンの様相となった。筆者は梨泰院駅を通る地下鉄を頻繁に利用するが、当時、梨泰院駅の乗降客は1人もなく、路線自体の利用者も少なくなっていた。
梨泰院は外国人が多い街である。旧日本軍の龍山基地を引き継いだ在韓米軍人の歓楽街として発展した経緯から、怖い街と考える韓国人は少なくないが、サムスンが美術館を建設し、インターパークがミュージカル劇場を建てるなど、治安に対する不安が薄れて若い女性も増えている。
各国の大使館が集中する大使館通りや韓国初のイスラム教モスクもある韓国随一の外国人街で、世界各国の料理店や雑貨店が並んでいる。新型コロナの影響で、海外に行くことが難しい今、母国の味を懐かしむ在韓外国人や本場の味を求める韓国人が少しずつ戻っている。
弘大は、若者の街として知られている。美術系大学として有名な弘益大学のキャンパスがあり、卒業生らがデザインやアイデアを発信する街として発達した。
個性的なショップやカフェが立ち並び、いまは新型コロナの影響で規制されているが、若者たちの創作活動や路上パフォーマンスが連日のように行われてきた。物価が安い街ではないが、大学を卒業してまもない20代に加えて、若者文化や新進トレンドに接したい人々が集まっている。
外国人旅行者に依存する明洞の凋落
一方、明洞の主要客は、外国人旅行者だ。多くの店が韓国語と日本語、中国語、英語の看板を設置しており、日本語話者や中国人話者を常駐させる店も多い。ソウル市が派遣する日本語、中国語、英語の通訳ガイドが街角に立ち、域内を巡回する警察官も翻訳アプリをインストールしたタブレット端末を携行する。明洞固有のアイテムは、外国人旅行者に飲食物や商品を売る屋台と足の踏み場がないほどの賑わいだ。
韓国には地方特有の名産はほとんどない。各地で名が知れ渡ったアイテムは必ずといって良いほどソウルに集まり、首都の市民権を得た後、国内各地に広がっていく。明洞は、国内各地が同じようなアイテムで溢れる韓国を凝縮した街でもある。