アフガン難民危機がくる、「EUだけでは手に負えない」(マクロン)
EU Received Over 4,600 Afghan Asylum Applications Since May, Prompting Migrant Wave Concern
恐怖に駆られ、カブール空港で米軍輸送機に殺到した約640人のアフガン人 U.S. Air Force/REUTERS
<突如、実権を掌握したタリバンの支配を恐れるアフガン人が、国外へ逃れてくる。2015年のシリア難民危機以来の対応を世界は迫られることになる>
8月15日、アフガニスタンの反政府勢力タリバンが全土を掌握、首都カブールを陥落させたことで、アフガン難民危機への懸念が広がっている。米軍の撤退方針が明らかになった2月以降、欧州連合(EU)の欧州庇護支援事務所(EASO)には多くの難民申請が寄せられるようになっており、5月には月4648件に達していたと、AP通信は報じている。
加盟国の外相は8月17日に緊急会合を開き、タリバンの政権掌握がもたらす安全保障面の影響について議論した。EUの推計によると、2015年以降、難民申請を行ったアフガニスタン国民は約57万人に達する。シリア難民に次ぐ大規模な集団だ。
8月16日にはフランスのエマニュエル・マクロン大統領が、仏独をはじめとする欧州各国は共同で、難民認定はできない不法移民の新たな大波に「確固たる対応」をするとしながら、「欧州だけでは責任を負えない」と付け加えた。
背景には、厳格なイスラム主義組織であるタリバンの支配を恐れるアフガニスタン人が、大量の難民となって流出するという危惧がある。
ドイツのハイコ・マース外相は緊急会合の主要議題は、アフガニスタン在住のEU市民およびEU関連施設で働くアフガニスタン人スタッフの国外退避、タリバンへの対応、そして、アフガニスタン難民が大量に逃れてきた場合いかにして地域の不安定化を防ぐかだ、と語った。
「我々は、事態の進展を注視している。現在アフガニスタンで権力を行使している者たちの正当性は、その行動によって判断される」と、マースはベルリンの記者団に語った。「とりわけアフガニスタン周辺地域の安定化は重要だ。近隣諸国がさらなる難民の流入に直面するのは確実だからだ」
欧州の国々は、2015年にシリア内戦から逃れた大量のシリア難民が押し寄せた時の危機の再燃を懸念している。2015年の欧州難民危機では、主にシリアとイラクからゆうに100万人を超える移民が押し寄せた。対応をめぐって各国の足並みは乱れ、EUの団結にとって最大級の危機が発生した。
マクロンは、難民の波に対する「確固たる対応」は、アフガン難民が途中で通過するであろうトルコを含む各国との協調による取り組みになると述べた。
オーストリアは、18日のEU内相会議で、難民認定できなかった申請者の本国送還業務を担うセンターを、EU域内ではなくアフガニスタンの近隣諸国に設置するよう提案する計画だ。難民申請のうち難民認定が得られるのは約半分ほど、というのがこれまでの傾向だ。