タリバン政権復活、バイデンが検討すべきだった1つのこと
No One’s Surprise
問題はほかにもある。政府軍よりもタリバンのほうが、自分たちの大義に情熱を感じていて、そのために戦う決意が固い。
これに対して、政府軍の兵士をはじめとする庶民の多くは、タリバンを憎み、恐れてはいるものの、政府に愛や忠誠心を抱いていない。
一部残留の選択肢は排除
2010年にバラク・オバマ米大統領(当時)がアフガニスタンへの増派を進めたとき、米軍幹部は、アフガニスタン政府の腐敗を一掃しない限り、増派の効果は乏しいと警告した。だが、腐敗問題はほぼ放置された。そしてタリバンは、腐敗した政府に対する庶民の怒りを利用した。
ジョー・バイデン米大統領が4月に、アフガニスタン駐留米軍を9月11日(後に8月末)までに完全撤収させると発表したのは、あまりにも突然で、間違いだったのか。
アメリカはもう十分長いことアフガニスタンにいたと、バイデンは説明した。
米同時多発テロの首謀者であるウサマ・ビンラディンを殺害し、アルカイダを討伐するという当初のミッションは、とうに達成された。それ以外の、国家建設などの目標は夢物語にすぎない。長年支援してもまだ政府軍が自力で戦えないなら、永遠に無理だろう。だから今、撤退しよう、と。
これらの指摘はどれも正しい。だが、バイデンが1つだけ検討しなかったことがある。それは米兵の一部残留だ。
オバマ政権は迷走の末にこれをやった。増派から1年半たっても、反政府組織の討伐がうまくいっていないと気付くと、オバマは米軍の撤収を決めた。ただし土壇場になって、全員ではなく、5500人は残すことにした。
理由は2つある。
まず、アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領(当時)が、2国間安全保障合意に署名して、米兵の法的保護を約束した。
一方、アフガニスタンとパキスタンの国境地帯は、昔からテロ組織の温床となっていた。パキスタンは核保有国であり、その動向に目を光らせておくべき理由はたくさんある。するとガニが、3つの軍事基地を米軍が使っていいと提案した。だからオバマは、戦闘への関与を大幅に減らしつつ、限定的な数の兵士を留め置くことにしたのだ。
たとえ限定的でも、米兵のプレゼンスは、タリバンを遠ざけ、女性の権利など市民社会の片鱗を守ることができた(米ドルの流入はエリート層の腐敗を維持する働きもしたが、この問題は別の機会に論じることにしよう)。
バイデンも同じことができたはずだった。それも、もっと少ない兵力を維持し、もっと戦闘への関与を減らして。