最新記事

森林火災

樹齢2500年のオリーブの巨木が消失、ギリシャ森林火災

Greece Wildfires Destroy Ancient Olive Tree That Was 2,500 Years Old

2021年8月10日(火)15時54分
アリストス・ジョージャウ
ギリシャの森林火災

まるで地獄。火災から家畜を避難させようとする農民(8月7日、アテネ郊外) Giorgos Moutafis- REUTERS

<黙示録を思わせる大火が古代ギリシャからの生命の営みを焼き払う>

数日で数千人が自宅からの避難を余儀なくされ、現在も延焼中のギリシャの山火事で、エヴィア島に生えていた樹齢2500年の由緒あるオリーブの木が焼失した。

近くに住むアポストリス・パナギオトウは8月8日、ツイッター上に、火災前と火災後のオリーブの木を撮影した写真を投稿した。

今でも実をつけていたこのオリーブの木は、幹の直径に沿って10人が並べるほどの巨木だったと、ニュースサイト「グリーク・レポーター」は伝えている。

「ロヴィアのオリーブ林」にあったこの太古の木は、約2000年前にギリシャの有名な地理学者で哲学者、歴史家のストラボンの著作にも登場する。

だが、エヴィア島北部の火災後はほとんどが焼失し、空洞だらけの根株の残骸が残るばかりだ。

エヴィア島は、アテネの北東にあるギリシャで2番目に大きな島。6日間以上にわたって山火事が猛威を振るっており、甚大な被害を出している。

これまでに膨大な面積の原生林が焼失しているほか、複数の村が呑み込まれたとロイターは伝えている。

多くの地元住民が、自宅を捨てて避難することを余儀なくされている。沿岸警備隊はすでにエヴィア島の各所で避難を進めており、2000人以上が船で島を離れた。

消防隊は火災を食い止めようと格闘しているが、地元当局は国の支援が不十分だと警告している。

まるでホラー映画

エヴィア島北部にあるイスティアイア‐アイディプソスは、8月8日に「グリーク・レポーター」紙に対して次のように述べた。「率直に言って、もっと多くを救うことができたはずだ。(ギリシャ当局に対して)消防飛行機の派遣を強く要請している。7日にごく一部が到着したが、それでは不十分だった」

「村が次々に焼け落ちている。自治体も次々に破壊されている。これまでに守られたものは、ボランティアと、この島の心ある住民たちによって救われたものだ。われわれの子どもたちは今後、この島の環境と土地を、これまでと同じようなかたちで目にすることはけっしてないだろう。エヴィア島北部をかつての姿に戻すためには、数十年にわたって格闘が続くことになるだろう」

過去30年で最悪の熱波に見舞われているギリシャでは、過去数日の間に首都アテネ郊外を含め約100カ所で火災が発生。エヴィア島も含め、その半分が今も燃え盛っている。一部地域では気温が摂氏45度を超え、火が燃え広がりやすい条件が整っていた。

ミナと名のるエヴィア島の住民は、ペフキの町で避難用フェリーに乗り込んだあとに、ロイターに次のように語った。「まるでホラー映画のようだ。でも、いま起きていることは映画ではない。これは現実であり、私たちは過去1週間、この恐怖にさらされßてきた」

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

神田財務官、介入有無コメントせず 過度な変動「看過

ワールド

タイ内閣改造、財務相に前証取会長 外相は辞任

ワールド

中国主席、仏・セルビア・ハンガリー訪問へ 5年ぶり

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 7

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中