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五輪を走ったアフガン難民の女子選手「日本映画で強い女性になることを夢見た」

2021年7月30日(金)10時40分

アリザダは2016年に姉妹と共にフランスのドキュメンタリー映画に出演した。それをきっかけに支持が広がり、17年に難民認定されて家族とともに同国へ移住した。北部リールの大学で土木工学を学ぶ学生でもあり、勉強と練習を両立させながら国際オリンピック委員会(IOC)から奨学金を取得、東京出場を果たした。

そのフランスでも、イスラム教徒の女性が身に着けるヒジャブで常に頭を覆い肌を出さない服装をしていることに奇異の目が注がれることがあると苦笑いする。文化としても女性としてもそれが「私の選択」と語るアリザダは、五輪でもいつもと変わらずヒジャブ姿にヘルメットをかぶりレースに臨んだ。

五輪の大舞台に立つという夢はかなえたが、アリザダには次の大きな目標がある。大学で土木工学の知識を深め、祖国アフガニスタンのインフラ整備、特に橋の建設に尽力したいという。

「アフガニスタンを嫌いだと思ったことは一度もない。差別など多くの問題はあるが、私はアフガニスタンを愛している」とアリザダは話す。ズーム越しのインタビューの最中、試合中の気迫あふれる姿とはまた違った希望に満ちた表情を見せてくれた。「いつかアフガニスタンに平和が訪れたら、女の子たちが何の屈託もなく自転車に乗っている姿を見てみたい」とアリザダは語った。

(田中志保 編集:久保信博)

[ロイター]


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