なぜ日本男子は世界で唯一、女性より幸福度が低くなるのか?
世界では『女性・高齢・低学歴の者ほど幸福度が低い』が、日本人はこれにすべて反しているという。Ranta Images - iStockphoto
「幸福度」を国別・男女別にみると、先進国や発展途上国を含むほとんどの国は女性のほうが男性より低い。一方、日本は逆に男性のほうが低い。統計データ分析家の本川裕氏は「OECDの統計を分析すると、世界のスタンダードは『女性・高齢・低学歴の者ほど幸福度が低い』が、日本人はこれにすべて反している」という――。
世界の中で日本人の幸福度は低いのか高いのか
本連載で以前、「男女格差ランキング120位は本当? 「女性が差別される国」日本で男より女の幸福感が高い皮肉」というテーマを扱い、反響が大きかった。
今回はこの時とは別のデータを使い、やはり日本人の幸福度は、世界の傾向とは反対に女性の方が高い点を示すとともに、男女別だけでなく、年齢別、学歴別といったその他の属性でも日本人の幸福度は世界の傾向に反していることを紹介することにしよう。
本題に入る前に、まず、「日本人の幸福度は全体として高いのか低いのか」という点について確認しておこう。
OECD(経済協力開発機構)の幸福度白書の最新版(「How's Life? 2020」)では、旧版と同様、幸福度を構成するさまざまの指標のひとつとして主観的幸福度(Subjective Well-being)のデータを掲載している。
私は、幸福度を論じる場合、幸福を左右すると思われる所得や生活環境、災害などに関するさまざまな指標を総合化して判定する方法では、どんな指標を使うかウエイトづけから恣意的になりがちなので、むしろ、この主観的幸福度そのものを重視すべきだと考えている。
同白書によれば「OECDのガイドライン」は主観的な幸福度の測定方法として以下の3つを区別している(※1)。
①生活評価(生活満足度など生活の全体評価)
②感情(喜怒哀楽など、機嫌の良し悪し)
③ユーダイモニア(Eudaimonia)(人生の意味や目的、生きがい)
まず、「日本人の幸福度の程度は」という疑問を解くために、4月7日の記事でも使った世界価値観調査の「幸福感」(※2)と、OECD幸福度白書が掲載している「ネガティブ感情度」(※3)という両方のデータで幸福度の各国比較を試みることにしよう。
日本人の幸福度は、韓国やコロンビア、ポーランドなどよりも低い
図表1には、OECD諸国の幸福度ランキングを「幸福感」と「ネガティブ感情度」の両方で示した(※4)。後者では、指標値の低いほうが幸福度は高く、指標値の高いほうが幸福度は低いと解した。