最新記事

ハイチ

大統領暗殺で揺れるハイチ 後任はコロナ死でさらに混迷

Haiti's Chief Justice Died from COVID-19 Days Before Moïse's Assassination

2021年7月9日(金)17時21分
レベッカ・クラッパー

ハイチは、西半球で最悪の部類に入る貧困や暴力、政治不安に見舞われている。食料品や燃料も手に入りにくく、インフレやギャングによる暴力が急増。労働者の60%は収入が1日2ドルに満たない。独裁体制や政局の混乱の歴史に加え、2010年の大地震と2016年の大型ハリケーン「マシュー」の被害からの復興もまだ完了していない。

そして起きた今回の大統領暗殺事件とその後の混乱に、ハイチ国民や海外で暮らす彼らの親族・友人たちは、今後の展開を懸念している。

マイアミのリトルハイチ地区に暮らすハイチ人コミュニティーを支援している団体「ファミリー・アクション・ネットワーク・ムーブメント」の事務局長であるマーリーン・バスチャンは、「現地で権力の空白が生じており、人々は家族や友人がどうなるのかと恐れている」と語った。

憲法改正に反発が高まっていた

バスチャンは、ハイチで自由で公正な選挙が実施されるように、ジョー・バイデン大統領率いる米政権がこれまで以上に積極的な支援を行って、ハイチ国内の対話を促していくことが重要だと述べた。彼女はまた、海外に暮らすハイチの離散民たちが、その対話に参加できることを願っているとも語った。「一時しのぎの対応はもういらない。ハイチの人々はあまりにも長い間、苦しんできた」

ハイチではこの数カ月、モイーズに抗議する運動が拡大して暴力に発展していた。モイーズは大統領の権限を強化する憲法改正案を推し進めており、秋には憲法の是非を問う国民投票を計画していたが、複数の野党指導者とその支持者たちはこれを拒否していた。

モイーズ暗殺から数時間が経過しても、首都ポルトープランスでは公共交通機関の運行も露天商の姿もまばらな状態が続いていた。普段は大勢の人でにぎわっているこの地域では異例の光景だ。断続的に鳴り響く銃声は、ギャングの勢力伸長を思い起こさせる。6月だけでも1万4700人を超える人々が、領土をめぐる争いの中で自宅を焼かれたり、荒らされたりして避難を余儀なくされた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ次期米大統領、ウォーシュ氏の財務長官起用を

ビジネス

米ギャップ、売上高見通し引き上げ ホリデー商戦好発

ビジネス

気候変動ファンド、1―9月は240億ドルの純流出=

ワールド

米商務長官指名のラトニック氏、中国との関係がやり玉
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中