オーストラリアでも自由がない中国人留学生、中国政府が家族を人質に監視、互いの密告も奨励
Chinese Police Threatened to Jail Student Over Pro-Democracy Tweets
オーストラリアの各大学にとって、これは財政的にも外交的にも微妙な問題だ。オーストラリア政府は国内の大学に対して、中国と提携関係を築くよう促しており、各大学はそれによって巨額の利益を得てきた。
海外からの留学生受け入れはオーストラリアの一大産業で、2019年には同国経済に300億ドルの利益をもたらした。同国のシンクタンク「独立研究センター」の2019年版の報告書によれば、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が発生する前は、海外からオーストラリアに留学してくる学生の40%以上が中国人だった。
だがパンデミックの発生でオーストラリアは2020年3月に国境を閉鎖。オーストラリア大学協会によれば、2020年に大学の収入は140億ドル減少した。2021年には150億ドルの減収になる見通しだ。最近になって、2021年後半から一部の留学生の受け入れ再開を目指す試験プログラムが発表されている。
「大学側に報告を」と呼びかけ
留学生に対する干渉を指摘されたことは、中国政府にとってきわめて厄介だ。オーストラリアは2018年、外国の主体による内政干渉を阻止するための法律を成立させた。中国がオーストラリアの政治や大学などの各種機関に密かに干渉することを阻止することが、この法律の主な目的とみられており、中国は法律の成立に激怒。両国間の緊張は高まっていた。
ヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取り調査に答えた留学生の多くは、嫌がらせを受けたことを大学側に報告しなかった。大学は中国人留学生の権利よりも中国政府との関係維持を重視していると考えたからだという。
報告書を読んだオーストラリア大学協会の最高責任者、カトリオナ・ジャクソンは、中国人留学生や教員らに対して、いかなる嫌がらせも大学側に報告するよう促した。
ジャクソンは、各大学が中国の干渉を黙認しているということはないと否定。政府のタスクフォースと協力して問題の解決を目指していると主張する。「自由に議論し、知識を探究し、意見を戦わせることは、オーストラリアの大学が行う全ての活動の中核だ」