最新記事

変異株

デルタ株、感染者の74%はワクチン接種済み WHO 「苦労して獲得した成果が危機に」

2021年7月31日(土)09時20分
新型コロナウイルス

米疾病対策センター(CDC)は、新型コロナウイルスの変異株「デルタ」には水ぼうそう並みの感染力があり、ワクチン接種を完了している人にも感染する可能性があるほか、従来のコロナウイルスよりも重症化する恐れがあるという内部文書を公表した。写真は2020年1月撮影(2021年 ロイタ-)

米疾病対策センター(CDC)は、新型コロナウイルスの変異株「デルタ」には水ぼうそう並みの感染力があり、ワクチン接種を完了している人にも感染する可能性があるほか、従来のコロナウイルスよりも重症化する恐れがあるという内部文書を公表した。

CDCは「戦いに変化が起きたことを認めるべき」とし、急速に拡大するデルタ株を巡るリスクを周知させるために新たな対応が必要と強調した。

ワクチン未接種者が感染する確率は、ワクチン接種を完了している人に比べ3倍高く、重症化もしくは死亡するリスクは10倍以上高いという。

報告書によると、デルタ株は、中東呼吸器症候群(MERS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、エボラ、風邪、季節性インフルエンザ、天然痘を引き起こすウイルスよりも、感染力が高いという。

ワクチン接種を済ませている人が感染する公算は小さいものの、一度感染すると、ワクチン未接種の人と同様に他の人にウイルスをうつす可能性があるという。

CDCは感染拡大抑制に向け、脆弱な人々を守るために医療従事者へのワクチン接種を義務化し、全て人にマスク着用を義務付ける対応を提言した。

CDCは27日、マスク着用の指針を変更し、ワクチン接種を済ませた人もマスク着用を再開すべきだと表明。指針の変更は今回の内部文書に基づくものだったという。

30日時点で、マスク着用が必要と見なされるコロナ感染率の高い地域は米国内の73.8%の郡という。29日の69.3%から拡大した。

また、CDCが30日に公表したマサチューセッツ州で発生した感染の調査に関するデータからは、感染者の約4分の3がワクチン接種を済ませた人だったことが分かった。

データによると、公のイベントで新型コロナに感染した469人中、74%がワクチン接種を完了していた。さらに、感染者133人から採取したウイルス検体の90%がデルタ株だったことも明らかになった。

世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は30日、デルタ株の感染拡大によって、コロナとの戦いで「苦労して獲得した成果が危機にさらされている、もしくは失われつつある」と警告した。

WHOで緊急事態対応部門を統括するマイケル・ライアン氏は「ワクチンにはなお、重症化や入院の予防で大きな効果がある」と強調した。

また、米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は30日、食品医薬品局(FDA)が早ければ8月半ばまでに新型コロナワクチンを正式承認することを期待しているとし、正式承認されれば、一段のワクチン普及を後押しする可能性があると述べた。

これまでに米ファイザー・独ビオンテック、米モデルナが正式承認に向けた申請を行っている。

米国では現在、ファイザー・ビオンテック製ワクチンが12─18歳向けに承認されている。ファウチ氏は秋にかけ、ワクチンが11歳以下にも効果があるかを示すデータを確認できる見通しとした。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:替えがきかないテスラの顔、マスク氏後継者

ワールド

ウクライナ議会、8日に鉱物資源協定批准の採決と議員

ビジネス

仏ラクタリスのフォンテラ資産買収計画、豪州が非公式

ワールド

ドイツ情報機関、極右政党AfDを「過激派」に指定
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中