高まる自然災害リスク、アメリカ本土の建造物の57%は危険地域にある
ハリケーンによる洪水に見舞われたルイジアナ州 2020年10月 REUTERS/Jonathan Bachman
<地震、洪水、ハリケーン、竜巻、山火事という5つの自然災害について、各災害事象の発生確率と規模をもとに米国本土で「ホットスポット」を特定した>
気候変動によって自然災害のリスクが高まっている。自然災害はより頻繁に発生し、より激しく、その規模も大きくなり、毎年、多くの建物や社会インフラに被害が及んでいるにもかかわらず、米国本土では、今もなお、都市開発や地域開発が活発にすすめられている。
このほど、米国本土の建造物の過半数が自然災害の起こりやすい場所にあることが明らかとなった。
自然災害のホットスポットは米国本土の31%に
米コロラド大学ボルダー校環境科学共同研究所(CIRES)の研究チームは、地震、洪水、ハリケーン、竜巻、山火事という5つの自然災害について、各災害事象の発生確率と規模をもとに「ホットスポット」を特定してマップ化し、不動産データベース「ジロウ」から抽出した米国全土の土地利用データと比較した。
2021年6月8日にアメリカ地球物理学連合(AGU)の学術雑誌「 アーツ・フューチャー 」で発表された研究論文によると、これら自然災害のホットスポットは米国本土の31%に及び、住居、学校、病院、オフィスビルなどの建造物の57%がホットスポットにあることがわかった。
地震やハリケーンが発生しやすい構造物の密度が最も高くなっているようです。国内の他の地域での開発と比較して、ハリケーンが発生しやすい地域の建物は、1945年以来3倍に急増しています。
2つ以上の自然災害のホットスポットが交わる建造物は1945年時点の17万3000棟から大幅に増加し、150万棟を超えている。
研究論文の筆頭著者でコロラド大学ボルダー校環境科学共同研究所のバージニア・イグレシアス研究員は、「気候変動がいくつかの自然災害による被害のリスクを高めている」と述べ、さらに既知の危険地帯に非常に多くの建造物を建設してきたことで、その被害が一層強まる傾向にあることを指摘している。
地震やハリケーンのホットスポットでは、都市部や郊外のすでに開発されたエリアにビルや住居などがさらに建設されることで災害リスクが高まっている。
特に気候変動がハリケーンの強度と頻度を増加させており、はるかに多くの人々が危険にさらされることを意味する。
地震のホットスポットでの建物棟数密度は米国本土の平均よりも1.7倍高く、ハリケーンのホットスポットでは3.1倍高い。また、水害や竜巻、山火事のホットスポットでは、過疎地や原野に新たな建造物を建設することで災害リスクが高まっており、たとえば、1992年から2015年の間、毎年、平均250万戸の住宅が山火事から1km以内にあった。
自然災害が社会経済的不平等を悪化させる
研究チームは、州・地方政府に対し、一連の研究成果の手法を用いて管轄区域のリスク評価を行うとともに、地域住民や地域コミュニティへのリスク影響度を高めるおそれのある社会経済要因を分析しておくよう提唱している。
また、イグレシアス研究員は「脆弱性は重大な問題だ。自然災害が社会経済的不平等を悪化させる証拠もある」と述べ、災害弱者が暮らすエリアやそのエリアでの自然災害リスクを明らかにしておく必要性についても説いている。