焦りの文在寅、諦めの金正恩、文が汚名を回避するリミットは3月
KOREAN AFFAIRS
ILLUSTRATION BY KYOJI ISHIKAWA FOR NEWSWEEK JAPAN
<何の成果も出せず、支持率が下がり始めた文在寅政権。2022年3月の韓国大統領選を前に、北朝鮮問題が動き出すかもしれない>
朝鮮半島情勢は2021年末に向けて騒がしくなりそうだ。まず、2022年3月に韓国で大統領選がある。選挙戦は既に始まっている。
文在寅(ムン・ジェイン)政権の支持が振るわない。2017年の就任以来、彼が誇っていた支持率40%の「コンクリート支持層」は崩れ始めた。
昨年の今頃は「あと10年は革新政権が続く」と豪語していた与党「共に民主党」も危機感を募らせている。
コンクリート支持層が崩れたのは、なによりも内政──不正腐敗の問題と、肌で感じる経済回復がないためだ。これにコロナ禍も加わった。
特に住宅問題で高位高官が投機的な土地を買いあさっていたことが発覚。住宅価格の急騰で、文大統領誕生を強く後押しした結婚適齢期の若者や庶民層には住宅購入が夢のまた夢になっている。
韓国人にとって住宅の持つ重みは日本とは違う。住処(すみか)でもあり投資の対象でもあるので、持てる者に対する反感はかなり強い。
一方、今年6月には保守系最大野党「国民の力」代表に36歳の李俊錫(イ・ジュンソク)が選ばれた。秀才とされながら議員経験がない彼が他のベテラン議員候補を制して当選したのは、若者の支持と、既存体制の打破を国民が望んでいることの表れとも言える。
4月の首都ソウルと釜山の市長選では共に「国民の力」候補が圧勝したが、これも同じ理由だろう。
発足当時から高い支持率を誇ってきた文政権だが、これまでの4年間で目に見える成果がない。経済回復と若者の雇用増大を掲げたものの、それもうまくいっていない。
同時に注力した北朝鮮との関係改善も低調のままだ。ラブコールを送った結果、2018年に史上3度目の南北首脳会談を果たし、これは史上初の米朝首脳会談へとつながったが、北朝鮮が変わった兆しはない。
経済制裁の緩和・撤回と核開発維持の両方を北朝鮮が狙っていたためだが、制裁は維持され、首脳会談をしても「何も変わらない」と北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記は分かったのだろう。
経済交流や支援などが南北首脳会談で決められたが、現在は何をやろうにも国連の経済制裁に抵触してしまう。文政権の中には「南北だけでやれるものはやってしまおう」という声もあったが、米国がそれを許さない。
北朝鮮からすれば、「トップが取り決めた約束を韓国は全く守っていない」ことになる。文に対する不信感は相当に根強い。