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焦りの文在寅、諦めの金正恩、文が汚名を回避するリミットは3月

KOREAN AFFAIRS

2021年7月9日(金)17時10分
浅川新介(ジャーナリスト)

北朝鮮は今「三重苦」

一方の米国に対しても、北朝鮮は交渉を諦めた感がある。今年4月末に米バイデン政権は北朝鮮政策の骨子を発表。対話と圧力は続けつつ、前政権、前々政権と比べると対話の可能性を少し広げた。

しかし米朝首脳会談の失敗は、今も北朝鮮で尾を引いている。制裁の緩和も核保有国のお墨付きも得られなかったことに金は不満を抱いており、今年1月の党大会では「具体的な成果が得られない対話はしない」と示唆した。

北朝鮮は経済制裁にコロナ禍、水害など自然災害からの復旧という「経済三重苦」にある。

特にコロナ禍で国境を封鎖し、貿易が中断して1年半がたつ。外貨収入は急減し、ガソリンなども入手が厳しいとの声が聞こえてくる。6月の党総会では、金正恩自ら食糧事情が厳しいと認めた。

韓国では文が任期ギリギリまで南北関係改善に努めるだろう。そうしなければ、何の成果も出せなかった大統領との汚名を残してしまうからだ。

もし政権交代で保守政権が登場すれば、北朝鮮には強硬姿勢を示し、文のように甘い顔はしない。「米国だけを相手にすれば、日韓はそれに付いてくる」と考えている北朝鮮にとって、これまでのような一点突破で状況を改善するチャンスは減っていく。

だからこそ今が好機だ。米国は北朝鮮に対話のボールを投げている。投げ返すかどうかは北朝鮮次第だ。

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