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考古学2万5000年前の堆積物からヒトの環境ゲノムが抽出される
ジョージアのサツルブリア洞窟での発掘の様子 (C)Anna Belfer-Cohen
<サツルブリア洞窟の約2万5000年前の土のサンプルから、ヒトを含む3種の哺乳類の環境ゲノムを抽出することに成功した>
黒海沿岸の国ジョージアの西部、サツルブリア洞窟では、旧石器時代、人類が居住していたと考えられている。これまでに1万5000年前のヒトのゲノムがこの洞窟で確認されているが、それ以前の堆積物からは見つかっていない。
環境DNA(eDNA)とは、土壌などの環境から採取されるDNAである。骨片や糞便などに沈着して堆積物の中に残され、古生物学など、様々な研究分野で用いられている。
ヒトを含む3種の哺乳類の環境ゲノムを抽出することに成功
オーストリア・ウィーン大学と英フランシス・クリック研究所(FCI)の研究チームは、サツルブリア洞窟の約2万5000年前の土のサンプルから、ヒトを含む3種の哺乳類の環境ゲノムを抽出することに成功し、これを分析した。
2021年7月12日に学術雑誌「カレントバイオロジー」で掲載された研究論文によると、ヒトの環境ゲノムは、ユーラシア人の祖先にあたり、現代の西ユーラシア人につながる絶滅した系統であった。この環境ゲノムをサツルブリア洞窟近くのズズアナ洞窟で発掘された人骨から得た遺伝子配列と比較したところ、遺伝的類似性が認められた。
この研究では、ヒトのほか、オオカミとバイソンの環境ゲノムも抽出された。オオカミは、これまで知られていなかった、おそらく絶滅したコーカサスの系統とみられる。また、バイソンの環境ゲノムは、現存するアメリカバイソンよりもヨーロッパバイソンと近縁であった。つまり、これら2系統は、サツルブリア洞窟にバイソンが生息していた2万5000年前よりも前に分岐していたことになる。
骨が残されていなくても、ヒトの環境ゲノムを抽出できる
一連の研究成果は、ヒト、オオカミ、バイソンの後期更新世の遺伝的歴史に新たな洞察をもたらすものだ。また、遺骨が残されていなくても、ヒトの環境ゲノムを抽出できる可能性があることも示している。
研究チームでは、絶滅した動物相と人類との相互作用や気候変動が哺乳類集団にもたらす影響を解明するべく、サツルブリア洞窟で採取した土のサンプルの分析をさらにすすめる方針だ。