最新記事

新型コロナウイルス

スマートウォッチ計測で「新型コロナは平均2〜3ヶ月間、身体に影響をもたらす」ことが明らかに

2021年7月15日(木)18時10分
松岡由希子

スマートウォッチ計測データを使って新型コロナの長期的な生理学的影響を研究した  Zinkevych-iStock

<ウェアラブルセンサーの計測データをもとに新型コロナウイルス感染症による生理学的・行動的変化について分析した結果、平均2〜3ヶ月にわたって新型コロナウイルス感染症の影響が続いていることが明らかになった>

スマートウォッチやフィットネストラッカーのウェアラブルセンサーは、身につけることで、安静時心拍数(RHR)や睡眠状態、身体活動度などを常時計測できる。このほど、ウェアラブルセンサーの計測データをもとに新型コロナウイルス感染症による生理学的・行動的変化について分析した結果、平均2〜3ヶ月にわたって新型コロナウイルス感染症の影響が続いていることが明らかとなった。

安静時心拍数、睡眠時間、歩数が回復するのに時間がかかった

米スクリプス研究所の研究チームは、2020年3月、ウェアラブルセンサーの計測データを用いて新型コロナウイルス感染症の長期的な生理学的影響を研究するプロジェクト「DETECT研究」を創設。

2020年3月25日から2021年1月24日までにこのプロジェクトに参加した3万4146人のうち、急性呼吸器疾患を発症して新型コロナウイルス感染症のPCR検査を受けた875人を対象に、ウェアラブルセンサーの計測データを分析した。その研究成果は、2021年7月7日、オープンアクセスジャーナル「JAMAネットワークオープン」で発表されている。

対象者のうちPCR検査で陽性と診断されたのは234人で、残りの641人は陰性であった。陽性者は、陰性の人に比べて、安静時心拍数、睡眠時間、歩数が正常レベルに回復するまでの期間が長かった。特に、安静時心拍数の回復に要する期間の違いは顕著で、初期症状で一時的な徐脈があった陽性者は、その後も頻脈が続き、発症から79日後にようやく回復した。

陽性者のうち、急性期に咳や体の痛み、息切れがあった13.7%では、安静時心拍数が正常時と比べて5回以上増加する状態が133日以上にわたって続いたという。また、歩数の回復には平均32日、睡眠時間の回復には24日かかった。

研究チームは、これらの分析結果をふまえ、「初期症状の重症度と安静時心拍数の変化の大きさによって、新型コロナウイルスから生理学的に回復するまでにかかる期間を予測できるかもしれない」と考察している。

参加者を10万人規模に拡大させて研究継続

米国では、2019年7月時点で、成人の21%が「スマートウォッチまたはフィットネストラッカーを習慣的に身につけている」とJAMA回答

「DETECT研究」では、ウェアラブルセンサーの計測データをより多く収集し、分析することで、「なぜ、新型コロナウイルス感染症からの回復に要する時間が人によって異なるのか」についての解明がすすむと考えており、今後、参加者を10万人規模にまで拡大させて研究活動を継続する方針だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン大統領、16年ぶりにスリランカ訪問 「関係強

ワールド

イランとパキスタン、国連安保理にイスラエルに対する

ワールド

ロシア、国防次官を収賄容疑で拘束 ショイグ国防相の

ワールド

インドネシア中銀、予想外の利上げ 通貨支援へ「先を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 6

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中