最新記事

免疫

風邪をひいているとコロナを予防できる可能性がある 米イェール大研究

2021年6月29日(火)16時30分
青葉やまと

一方、コロナへの曝露時にすでにライノウイルスに感染していた場合、すでに体内ではライノウイルスに抵抗すべく、豊富なインターフェロンとインターフェロン誘導遺伝子が用意されている。これが新たに侵入してきたコロナウイルスの複製にすばやく歯止めをかけ、増殖を抑え込むというしくみだ。

同様の関係は、風邪とインフルエンザについても成立することがわかってきている。フォックスマン博士の研究室では昨年行った実験により、風邪ウイルスがインフルエンザへの感染を予防する可能性があることを突き止めていた。その知見を生かし、新型コロナウイルスとの関係が明らかになった。

なお、注意点として、インターフェロンの持続期間は1〜2週間ほどとなっている。そのため、一度風邪をひけばコロナにかからないというわけではない。

昨年からの学説に決着

風邪がコロナに対して予防効果を発揮するのではないかという見解は昨年から出ていたものの、その真偽や詳細なメカニズムなどは未検証のままだった。英スカイニュースは昨年10月、フォックスマン博士たちが今回の実験前に発表した仮説を報じている。以降、半年以上にわたって決着を見なかったコロナと風邪の関係性が、本研究をもって立証された形となる。

博士は今回、イェール大学が発表したプレスリリースのなかで、「ウイルス同士のあいだには、私たちの理解が及ばない知られざる相互作用があります。今回の発見は、新たに私たちの目に明らかとなったパズルの一片なのです」と語り、ウイルスの世界にはまだまだ科学が追いついていない複雑な関係性があるとの見解を示している。

本研究では、例年人々を悩ませている一般的な風邪が、新型コロナウイルスに対する免疫機能を高めている可能性が示唆された。決して積極的に風邪をひくことが推奨されているわけではないものの、私たちの体内でまさに「毒を以って毒を制す」というべき興味深い現象が起きているようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中