最新記事

韓国政治

誰が文在寅を支持しているのか:韓国

2021年6月28日(月)18時30分
佐々木和義
文在寅大統領

<6月第4週の文在寅大統領に対する肯定評価は39.6%で、否定評価は56.7%だった。そもそも、文在寅政権は誰が支持していたのか...... >

韓国世論調査機関リアルメーターが2021年6月28日に発表した6月第4週の文在寅大統領に対する肯定評価は39.6%で、否定評価は56.7%だった。

一方、政党支持率は野党第一党・国民の力が38.0%で最も高く、与党・共に民主党は29.7%、国民の党が7.1%で続いている。

今回の調査は6月21日から25日に18歳以上の有権者を対象に実施され、2513人から回答を得た。支持率が30%前後で低迷していた文在寅大統領は、バイデン米大統領との首脳会談が正式発表された5月中旬以降、肯定評価が30%台後半に上昇。6月中旬には英国で開催されたG7に出席し、欧州3か国を歴訪した。

最大野党・国民の力は6月11日、歴代最年少の李俊錫(イ・ジュンソク・36歳)を新代表に選出し、20代と30代の支持率が上昇している。

これまでの大統領と比べて、高い支持率を維持している

文在寅政権の支持率は、就任直後は58%で、南北首脳会談が行われた18年4月には80%台まで上昇し、その後も高い支持率を維持したが、昨年12月以降30%台で推移している。

sasaki20210628b.jpg6月第4週の韓国世論調査(リアルメーター)より

文在寅大統領はこれまでの大統領と比べて、高い支持率を維持していると言える。就任時60%だった李明博大統領の4年目の支持率は24%だった。また就任時78%だった盧武鉉大統領も4年目は16%で、就任時42%だった朴槿恵大統領は就任から3年10ヶ月で職務が停止されたときの支持率は5%だった。

主な支持層は、「586世代」と労働組合、女性団体

文在寅政権の主な支持層は、「586世代」と労働組合、女性団体などである。586世代は、50歳代で1980年代に学生運動を行なった60年代生まれを指す。1990年に普及がはじまったwindowsパソコンのインテル社製CPUになぞらえて、かつては「386世代」と呼ばれた。

1980年代まで韓国政治の中心軸は反共で、ソ連のマルクス・レーニン主義や北朝鮮の主体思想などの書籍は輸入や販売が禁止されており、運動家らは日本から関連書を持ち込んで隠れて読んだという。一般に保守・中道層は自身の仕事や生活に有利な政策を掲げる党を支持するが、586世代は思想で選ぶ傾向が強く、親北を掲げる文在寅政権を支持している。

文在寅大統領は、就任すると仁川空港を手始めに公企業の非正規職を正規職に転換した。また最低賃金を大幅に引き上げて、労働時間の短縮を義務付ける52時間制を導入した。これらの施策は労働組合の要求と合致する。

韓国の労働組合は過激なことで知られるが、保守政権下の2011年から12年に制限が加えられた。2011年から企業内で複数組合の設立が解禁され、労働組合は組織の分裂と弱体化に繋がると反発した。また、2012年からは企業による労働組合専従者への賃金支払いが禁止された。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

米加首脳が電話会談、トランプ氏「生産的」 カーニー

ワールド

鉱物協定巡る米の要求に変化、判断は時期尚早=ゼレン

ワールド

国際援助金減少で食糧難5800万人 国連世界食糧計
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 6
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 7
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 8
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 9
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中