最新記事

生物

閲覧ご注意:ヘビを捕食するクモが世界中で確認されている

2021年6月24日(木)19時00分
松岡由希子
クモに捕らえられたヘビ

クモに捕らえられたヘビの87%が死んだ (Image credit: Julia Safer)

<スイス・バーゼル大学などの研究によると、ヘビを捕食するクモが40種以上存在し、世界中で確認されていることがわかった>

ヘビを捕食するクモが40種以上存在し、その様子が南極大陸を除くすべての大陸で確認されていることが明らかとなった。

スイス・バーゼル大学と米ジョージア大学の研究チームは、これまでに発表された研究論文、ニュース記事、SNS上の投稿などから、クモがヘビを捕食したことを記録する319件のデータを収集した。そのうち93%にあたる297件は自然事象を観察したもので、残りの22件は実験環境で観察されている。

体長1メートルのヘビを捕らえた記録も

研究チームが学術雑誌「ジャーナル・オブ・アラクノロジー」(2021年:49巻1号)で発表した研究論文によると、ヘビを捕食するクモは40種以上、クモに捕食されるヘビは90種以上確認された。

クモによるヘビの捕食記録319件のうち、約半数はゴケグモによるものだ。ハイイロゴケグモ、クロゴケグモ、セアカゴケグモなど、いずれも体長は0.6〜1.1センチで、その何倍もの大きさのヘビを強力なクモの巣で捕らえる。これに次ぐ10%を占めるのがタランチュラだ。大型で強力なタランチュラはクモの巣をつくる習性がなく、地面や木々で獲物を捕らえる。このほか、直径0.5〜1.5メートルの円形の巣をつくるコガネグモ科やジョロウグモ科によるものが8.5%を占めていた。

自然環境でクモに捕食されたヘビは86種にのぼり、実験環境ではさらに5種が捕食されていた。豪州を除き、ガーターヘビやコーンスネークなど、ナミヘビ科のヘビが多く捕食されている。

捕食されたヘビの大半は幼体や未成体で、平均的な体長は26センチ程度であったが、体長1メートル、重さ40〜60グラムもの大きなヘビを捕らえた記録もみられた。なかには、重さわずか0.0225グラムのマダラヒメグモが、クモの巣を使って、自重の355倍以上に相当する重さ8グラムのガーターヘビを捕らえた例もあった。

クモに捕らえられたヘビの87%が死んだ

クモによるヘビの捕食は、南極大陸を除くすべての大陸にわたり計25カ国で確認されている。自然事象の51%は米国で記録され、豪州が29%でこれに次ぐ一方、中南米の新熱帯区(8%)、アジア(6%)、アフリカ(3%)、欧州(1%)は少ない。

クモに捕らえられたヘビのうち87%が死に、1.5%は自力で逃げ出し、11%は人間に助けられて逃げた。ヘビがクモに捕らえられてから死ぬまでに要する時間は様々だ。クモに噛まれ、ヘビの体内に毒が入ってから数分後に麻痺するケースもあれば、死ぬまでに数日かかるケースもある。

一般に、昆虫を主食とするクモにとって、ヘビは補足的な食糧であるが、トカゲ、ヘビを多く食べるセアカゴケグモのほか、ヘビを主食とするタランチュラのような種も存在する。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中