ファストフード店の近くに住んでも大丈夫...米研究、体重増の通説を否定
気にすべきは都市の密度
肥満問題が深刻化するアメリカでは、都市ごとにファストフード店の展開度に顕著な差がある。また、とくに多くの店舗が見られる地域ほど肥満状態の人の割合が多いことが知られている。バスキウィックス博士たちの研究はこの事実と矛盾するようにも思えるが、博士はその点をどう捉えているのだろうか?
博士の説明によると、ジャンクフード店の多さが肥満を招いているわけではなく、所得格差によって貧しい人々が一定の地域に住まざるを得ず、こうした土地に割安なファストフードの出店が集中しているのだという。店があるからよく食べるようになるのではなく、もともとファストフードに頼りがちな人々はある程度固定されており、そうした人々が特定のエリアに引っ越してきやすい、という背景があるようだ。
一方、体重の経年変化と最も密接に関連していた要因は、都市の密度であった。今回の研究では、都市の密度が高い地域に住んでいる人ほど、経年変化による体重増加が抑えられているという傾向が出た。歩ける範囲に店が多くあるほど日常的に徒歩で済ませる習慣を獲得しやすく、健康増進に一役買っている模様だ。
これは、都市計画の分野で注目されるようになってきた「ウォーカビリティ(歩きやすさ)」の指標にも通じる考え方だ。住宅密度や商業密度が高く、そのほか適度な緑地があるなどの条件が整ったエリアは、ウォーカビリティが高いと判定される。このような地域ほど住民のBMI指数が低い傾向にあることが一般に知られている。
都市の構造から受ける体重変化を気にするのであれば、必ずしもファーストフード店が立ち並ぶエリアを避ける必要はない。その一方で、生活に徒歩を取り入れやすい地域を選ぶことで、無意識の日常的なエクササイズをこなしやすくなるようだ。