大卒者の県外流出で地域格差がさらに拡大する
データから首都圏が地方の高度人材を吸い上げていることが見える monzenmachi/iStock.
<下位3県の長崎、秋田、佐賀では、大卒者の地元定着率は50%代しかない>
大学進学率は時代とともに高まり、今では同世代の半分(50%)を超える。地域格差は大きいものの、地方でも進学率は高まっている。
さて地方の親の関心事は、都会の大学に出たわが子が帰ってきてくれるかどうかだ。行政にしても、東京や大阪の有名大学に進学した生徒が地元に戻ってきて、地域の発展に尽くしてくれるかには関心を持っている。筆者は鹿児島県出身で、高3のクラスの半数以上が県外の大学に進学したと記憶しているが、どれくらい戻っているのだろう。
2017年の『就業構造基本調査』によると、同年10月時点で鹿児島県に住んでいる40代前半の大学・大学院卒者は2万700人となっている。2017年の40代前半というと、1992〜96年に大学に進学した筆者の世代だ。鹿児島県の高校出身の大学入学者は1992年春が5798人、93年春が6207人、94年春が6025人、95年春が6278人、96年春が6606人となっている(文科省『学校基本調査』)。5年間の合算は3万914人だ。上の世代の入学者(浪人経由者)も含んでいるが、当該世代からも同数の浪人経由者が出るとみなす。
この世代の鹿児島出身者からは高卒時に3万914人(a)の大学進学者が出ているが、40代前半になった2017年時点で同県に住んでいる大学・大学院卒者は2万700人(b)。2つの数値に隔たりがあるのは、都会の大学に進学したが戻っていない、ないしは地元の大学を出た後、他県に就職した人がいるからだ。
大卒者のどれほどが地元に定着しているかは、上記の(b)を(a)で割って算出される。%にすると67.0%だ。当該世代の大卒者の地元定着率と呼ぼう。鹿児島県の筆者の世代だと7割弱ということになる。他県からの大学進学者や大卒就職者が押し寄せる東京では、この数値は155.0%にもなる。同じやり方で各県出身の大卒者の地元定着率を計算し、高い順に並べると<表1>のようになる。
都市部では膨らんで地方では萎むのが道理だが、その程度は県によってまちまちだ。13の県が7割未満で、3つの県では6割を下回る。最も低い長崎では51.8%だ。都会の大学に出たが戻ってこない、自県の大学を出た人が県外に就職してしまう。どちらが大きいかは分からないが、才能の流出は大きい。