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ワクチン「ワクチン接種の義務化がワクチン接種の普及を妨げるおそれ」との調査結果
ワクチン接種の義務化はむしろワクチン忌避を助長する ozgurcankaya-iStock
<独コンスタンツ大学の研究チームは、ドイツで新型コロナウイルスワクチンの義務化に対する意識調査を実施した>
新型コロナウイルスワクチンは、日本を含め、多くの国々で任意接種とされており、接種するかどうかは国民ひとり一人の意思に委ねられている。
ワクチン接種の義務化はむしろワクチン忌避を助長する
一方、スペイン北西部ガルシア州では、2021年3月、成人に新型コロナウイルスワクチンの接種を義務づけ、違反者に罰金を科している。イタリアでは、2021年4月、介護従事者に新型コロナウイルスワクチンの接種を義務づけた。
また、米カリフォルニア大学(UC)とカリフォルニア州立大学(CSU)は、アメリカ食品医薬品局(FDA)の承認が得られれば、2021年秋学期から、新型コロナウイルスワクチンの接種を教職員や学生に義務づける方針だ。
しかしながら、ワクチン接種の義務化はむしろワクチン忌避を助長し、ワクチン接種の普及を妨げるおそれがあることが明らかとなった。
公的機関への信頼レベルが低いとよりワクチン摂取意欲を減退
独コンスタンツ大学の心理学者で行動経済学者のカトリン・シュメルツ博士らの研究チームは、新型コロナウイルス感染拡大によりドイツで都市封鎖が実施された2020年4〜5月の「第一波」と10〜11月の「第二波」に、ドイツ人2653名を対象として、新型コロナウイルスワクチンの義務化に対する意識調査を実施。
その研究成果を2021年6月22日付の「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」で発表した。なお、ドイツでは一貫して、新型コロナウイルスワクチンは任意接種とされている。
この意識調査によると、「第二波」では1日あたりの感染者数が「第一波」の15倍に増加したにもかかわらず、ワクチン接種の義務化を支持した割合は「第一波」の44%から「第二波」では28%に低下し、これを「全く支持しない」と答えた割合は「第一波」の23%から「第二波」では30%に上昇した。女性はワクチン接種の義務化により消極的であり、東ドイツで生まれた人はワクチン接種の義務化をより支持する傾向にあった。
研究チームは、個人がワクチン接種に応じる大きな要因として、連邦政府や地方自治体、科学界、メディアを含めた公的機関への信頼をあげ、「ワクチンの義務化は、とりわけ公的機関への信頼レベルが低い人々で、ワクチンを接種したいという意欲を減退させる」と指摘する。また、この他の要因として、ワクチンの有効性への疑念や個人の自由への制限に対する反発もあげられている。
任意接種であれば波及効果が期待できる
ワクチンが任意接種であれば、当初はワクチン接種をためらっていた人々も、家族や友人ら、身近な人が接種する様子をみることで考えを改める可能性があり、ワクチンの接種者は次第に増えていく。このような波及効果が広がれば、ワクチンを義務化することなく、集団免疫を達成することも可能だ。
研究論文の責任著者で米サンタフェ研究所のサミュエル・ボウルズ研究教授は、ワクチン接種の義務化がもたらす負の作用として「ワクチンを接種しようという個人の意欲を削ぎ、任意接種であれば期待できたはずの波及効果を減少させるおそれがある」と指摘。「為政者は義務化のコストを慎重に検討することで、痛手となる誤りを回避できる。ワクチン接種の義務化は、反ワクチン接種を増加させるだけでなく、国民を政府や専門家からさらに遠ざけ、社会的葛藤を深刻化させるおそれがある」と警鐘を鳴らしている。