英海軍がリモート操縦船の実証実験に初成功...時代は「タブレットの中の戦争」へ
High-Tech Navy Ship Piloted Using a Laptop and a Tablet From Ashore
英海軍の空母クイーン・エリザベス(2017年) Peter Nicholls-REUTERS
<無人の船が海戦を戦う時代がやってくる? 船舶を高速で遠隔操縦できることの戦術的な意味は大きい>
イギリス海軍は6月1日、自律型船舶「MADFOX(MAritime Demonstrator For Operational eXperimentation)」のリモート操縦に初めて成功したと発表した。3月に公開されたハイテク実証船MADFOXにとっては「画期的な成果」だ。
MADFOXはこれまで、乗船した船員によって運航されてきた。しかし英海軍の声明によれば、今回のテスト運航は「海上を見渡せる浜辺に設置されたテントにいる船員2人が、ノートパソコン1台とタブレット端末1台」を用いて実施したという。場所は、英南東部ハンプシャー州にある港湾都市ゴスポートのブラウンダウン・ビーチだ。
テスト運航では、陸上からの船舶操縦が可能かどうかが検証された。また、ハンプシャー州と、イギリス海峡に浮かぶワイト島のあいだを流れるソレント海峡を行き来する船舶の監視が可能かどうかも確認された。
英海軍は6月1日、公式ツイッターで次のように投稿した。「船員たちは、海岸から英海軍の自律型運航船を操縦した。MADFOXにとって画期的な瞬間だった。海軍の技術開発チームNemesisは、将来的な実用化を目指して、無人船の実証実験を行ってきた(安全のために乗船者はいた)」
また、次のような声明も発表された。「この船や同種のシステムが、将来的に英海軍の船舶とともに配備され、軍隊の保護から監視業務にいたるさまざまな任務遂行で活用されることを期待している」
「戦術的な重要性を高める」
ツイートにもあるように今回のテスト運航では、安全対策として船員が乗船したが、実際の船舶の動きや速度、進行方向については、陸上にいる船員がリモートで操作した。
操縦した船員は、自律型運航船に搭載されたセンサーやカメラから得られるライブ映像や情報を把握して判断する技術を習得した。自律型運航船には、離れたところを運航する別の船舶に乗っている人々を識別できる「高解像度ズーム」機器なども搭載されているという。
英海軍は声明でこう述べている。「陸上に設置された船舶操縦の拠点から、実証実験が行われた海上を見渡すことができた。このシンプルな配置は、それ自体が未来へとつながるものだ。こうした拠点は、次世代フリゲート艦の26型や31型などに組み込まれることになる」
船舶向けの最新技術の開発を行う専門家チーム「ネイビーX」責任者の海軍中佐アントニー・クラブは「公園の池でラジコンボートを操縦するようなものだと思われるかもしれない」と語る。「しかし、今回の実証実験は画期的な成果だ。これで海兵隊員は、離れた船舶を高速運航できるという自信が得られる」
「われわれはこれまで艦船に乗船して監視を行ってきたが、これとは異なるやり方だ。このところ実施してきた一連の試みで得られた教訓をもとに、さらに複雑な任務を構成し、今後の実証実験に組み込んでいくことになる。そうしたプロジェクトは、将来のハイブリッド的な艦隊を形成するのに役立ち、戦術的な重要性を高めていくことになる」
(翻訳:ガリレオ)