中国の台湾侵攻は起こりえない──ではバイデン強硬姿勢の真意は?
Don’t Hype Invasion Fears
「バイデン大統領は、米経済を立て直すという自身の大きな構想を、中国との長期的な競争に生き残るために必要な措置だと正当化してきた」と、ニューヨーク・タイムズ紙のデービッド・サンガー記者は指摘する。「この競争でアメリカは、民主国家は約束を必ず実現し、専制主義国として世界一成功している中国に今後も先を越されることはなく、革新性でも生産性でも負けないことを証明しなくてはならない。バイデンがこうした主張をするのは、政権が提唱するインフラと経済の再建計画に党派を超えた支持を得たいためだ」
「共和党の一部の賛同も得られそうな抜け目ない主張だ」と、保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所のコリー・シャキーは指摘する。この試みはオバマ政権時代より効果がありそうだと彼女はみるが、それは「中国の行動が国内では抑圧的になり、対外的には攻撃的になってきているためだ」という。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は4月半ばの記事に、「中国への対抗意識から民主・共和両党がテック部門への支出で連携」という見出しを付けた。
記事は次のような文章で始まる。「全米科学財団の役割を拡大する法案は超党派の支持を得ており、成立すればテック関連部門に最大2000億ドルの研究資金が提供される。法案支持派は、中国の増大する脅威に対抗するには成立が必要だとしている」
国家間の緊張が高まったとき、当事者の国々は「どこまでやる覚悟なのか」を、特に「相手の感情を最も刺激する点を突くかどうか」を決断する必要がある。中国の感情を最も刺激するのは、自国領土の一部と見なす台湾の問題だ。
これまで米中間には、アメリカは台湾を独立国家と認めず、中国は武力による台湾再併合を行わないという暗黙の了解があった。これは1971年にヘンリー・キッシンジャー大統領補佐官が北京を極秘訪問したことから成立した合意だ。
このときキッシンジャーは、中国側にさまざまな要求を行った。だが中国の周恩来首相が抱いていた懸念はただ1つ、台湾問題だけだった。キッシンジャーは、アメリカが「北京政府を唯一、正当な中国と認める」ことに合意した。
しかしバイデンの大統領就任式には、台湾の駐米代表が招待された。4月には非公式の高官代表団が、バイデンの「個人的な(支持の)メッセージ」として、台湾に送られている。