最新記事

LGBT

LGBT擁護に立ち上がったルクセンブルク首相「同性愛は『選んで』なるものではない」

Luxembourg PM Dismisses Hungary's LGBT Law

2021年6月25日(金)18時32分
ジュリア・マーニン
ルクセンブルクのベッテル首相

ルクセンブルクのベッテル首相 Johanna Geron-REUTERS

<自らも同性愛者であることを公表しているベッテル首相が、LGBT情報を制限するハンガリーの新法を痛烈批判>

ルクセンブルクのグザヴィエ・ベッテル首相は、同性愛者であることを公表している。そんな彼が、このたび成立したハンガリーの新しいLGBT法を痛烈に批判した。

新法は、未成年がLGBT関連のコンテンツを視聴することを禁止するもの。これに対してベッテルは、自分はテレビドラマ「モダン・ファミリー」(2009年に米ABCで放送開始)を観た影響でゲイになったわけではないと発言した。

この法律は6月23日、ハンガリーのアーデル・ヤーノシュ大統領が署名して成立したが、欧州連合(EU)のリーダーたちからは怒りの声が上がっている。この法律により、ハンガリーの18歳未満の人々は、性教育番組から映画、広告まで、LGBT問題や同性愛、性転換に関するコンテンツを見ることを禁止される。

ベッテルは、「ゲイであることは選択ではない。私の場合、何かの広告や、モダン・ファミリーを見た翌日、目覚めたらゲイになっていたわけではない」とコメントした。「人生はそんなものではない。人生は......元から私の中にあったものだ。選んだ結果ではない」

この発言は、ベルギーのブリュッセルでEUサミットが開幕する前に行われたものだ。ベッテルはこのサミットで、LGBT法案の推進役を務めたハンガリーのヴィクトル・オルバン首相と顔を合わせることになっていた。

「自分自身を受け入れるだけでも、非常に難しいことだ。さらに社会的烙印を押されるようなことがあったら......とても手に負えない」

同性愛と小児性愛を結び付ける法律

ヨーロッパで最も小さく、最も豊かな国のひとつを率いるベッテルは、ユーモアのセンスとスマートな着こなしが光る人物だ。しかし、EUサミットが開幕した24日は意気消沈し、失望しているように見えた。

決して今回が初めてという訳ではないが、ベッテルは、自身のセクシュアリティについて公の場で話さざるを得ないと感じたようだ。

今回は、ハンガリーの新法が原因だ。この法律は子供たちを守ることが目的だとハンガリー政府は主張しているが、同性愛と小児性愛を結び付けているという批判が出ている。人権団体からも、同法案は強く非難されている。

6年前にパートナーの男性と結婚したベッテルは、この法律は現実と懸け離れていると考えている。

「私にとって最も難しかったのは、同性のこの人を好きだと気付いたとき、そんな自分を受け入れることだった。そのことを両親に言うのも、家族に言うのも、難しいことだった」とベッテルは振り返る。「それを受け入れることができず、多くの若者が命を絶っている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 5

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 9

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中