最新記事

コロナワクチン

中国シノバックのワクチンで死者が95%減、あのブラジルで起こった「奇跡」

Brazilian City Sees COVID-19 Deaths Fall by 95% After Sinovac Vaccine Used

2021年6月2日(水)19時27分
ゾーイ・ストロゼウスキ

同様に、世界的なワクチンの利用可能性の拡大を推進するサビンワクチン研究所のデニース・ギャレット副所長は、この結果を「いい結果だし、とても励みになる」と評価した。

ただし、ベチーナもギャレットも、研究結果に関してまだ疑問はあり、結果を適切に分析するためにもっとデータが必要で、接種を受けたが免疫ができなかった人に関する情報もほしいと言う。

セハナ市での感染は減速したが、わずか20キロ西にある大都市リベイランプレトのような近隣の地域では、新型コロナウイルス感染が急拡大している。その主な原因は伝染性の強い変異株の増加だと言われている。

リベイランプレトの病院はコロナ患者で満床となっており、同市の市長は、公共交通機関の停止や市の住民70万人に対し食料品を購入する時間を制限するなど、厳格な隔離措置を課した。何カ月も前からワクチン接種を待っている人もいる。ほぼすべての店舗が閉鎖され、集中治療室の病床の95%がコロナ感染者で占められている。

コロナ病棟は空きだらけ

ほんの数カ月前、コロナ対策に苦慮していたのは、セハナも同じだった、とジョアン・アントニオ・マダロッソ・ジュニア博士は言う。2021年の最初の3カ月間は、患者1人が回復すると、重症者が2人入院するという状態だった。

「1月末に、このプロジェクトがセハナで行われると聞いた。そして少しずつ落ち着きを取り戻した」と、マダロッソは空き部屋だらけになっているコロナ患者専用病棟を指差した。「これを見れば、ここがリベイランプレトや、周辺の地域よりもはるかに落ち着いた状態にあることがわかる。ワクチンは治療法ではないが、コロナを軽いインフルエンザに変える解決策だ。そして人々は以前と同じく生活ができるようになる」

だからいって、セハナから完全にコロナウイルスを完全に追い出すことができたわけではない。一部の住民は、ワクチン接種を拒否した。2回目の接種をしなかったり、ワクチンの効果が完全なものになる前にウイルスに感染したケースもある。既往症のせいでワクチン接種ができない人もいた。

ブラジルのジャイル・ボルソナーロ大統領は、ワクチンの有効性に繰り返し疑問を投げかけてきた。昨年は、自分の政権は中国製ワクチンを買わないし、ブラジル人を「モルモット」にさせないと言った。ブラジルの保健省は今年1月、同国の保健規制当局がワクチンを承認した後に、5400万回分のワクチンを追加購入する契約に調印した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

10月の全国消費者物価、電気補助金などで2カ月連続

ビジネス

欧州新車販売、10月は前年比横ばい EV移行加速=

ビジネス

ドイツ経済、企業倒産と債務リスクが上昇=連銀報告書

ビジネス

日産、タイ従業員1000人を削減・配置転換 生産集
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中