アジアゾウの群れが大都市の目前に、警察など400人が警戒
Chinese City Taps Over 400 Emergency Responders to be on Alert as Elephant Herd Approaches
今のところ動物や人に危害を加えたという報告はないが、農作物に100万ドル以上の被害が出ているという。
保護区を出発した時点でこの群れには16頭のゾウがいた。中国政府の発表によれば、そのうち2頭が保護区に戻り、旅の途中で新たに1頭が生まれた。公式報告によると、群れは現在、成年に達したメス6頭とオス3頭、そして未成年の3頭と子供のゾウ3頭で構成されている。
ゾウがこの壮大な旅に出た動機は謎のままだ。このゾウたちの出身地は、300頭ほどのゾウが暮らす緑豊かな熱帯の保護区だが、そこと同じようにトウモロコシやトロピカルフルーツなどゾウの好きな食べ物が豊富に手に入る土地を探しているのかもしれない。群れのリーダーが道に迷っただけではないかと推測する人々もいる。
世界自然保護基金(WWF)のアジア種保護担当マネージャー 、ニランガ・ジャヤシンゲによると、アジアゾウは本来の行動圏を守って暮らすものだが、何等かの騒動や資源の喪失、開発などの問題があれば、生息地から離れる可能性はある。
「このゾウの群れが、なぜ本来の縄張りを離れたのかは分からない。だが過去数十年で森林が農場に転換され、生息に適した土地が大幅に減ったことは分かっている」と、ジャヤシンゲは電子メールで答えた。「今回の現象は、新しい生息地を探す群れが道に迷い、そのまま進み続けたということかもしれない」
最高レベルの保護
当局は人とゾウの遭遇による被害の防止に取り組んでいるが「次に取るべき最善の対策を判断し、人間とゾウの間でトラブルが起きないようにしなくてはならない」とジャヤシンゲは指摘する。
昆明ではこの秋、生物の多様性に関する条約(CBS)の締約国会議が開催される予定。そこでは人間と野生動物の対立などのテーマについて議論が行われることになっている。「今回の事件は、野生動物と人間の両方の利益のために、根本原因と取り組む重要性を示すリアルタイムの実例だ」と、ジャヤシンゲは述べた。
中国の野生のゾウは最高レベルの保護を受けており、自然の生息地が縮小してもその数は着実に増加している。そして農民をはじめ人間はゾウに遭遇した場合、最大限の自制を求められ、ゾウを怖がらせて追い払うために爆竹を使用することは禁じられている。
これまでのところ、人口密集地にゾウを近づけない手段として、トラックや建設機械を投入して道路を封鎖し、エサを使って群れを誘導するなど、穏やかな方法がとられている。
だが昆明は人口700万人の大都市だ。最近、オスのゾウが1頭、みずから群れを離れ、近隣の人々を一時、不安に陥れた。