最新記事

アフガニスタン

米軍に協力したアフガニスタン人、アメリカに見捨てられタリバンに殺される危機が迫る

A Moral Obligation

2021年5月27日(木)21時17分
ロビー・グレイマー、ジャック・デッチ(フォーリン・ポリシー誌記者)
アフガニスタン人通訳と歩く米海兵隊員(2009年9月、アフガニスタン南部)

戦場の内外では現地の人々の協力が不可欠だった(アフガニスタン人通訳と歩く米海兵隊員、2009年9月、アフガニスタン南部)

<移民ビザの発給が間に合わなければ、米軍とともに働いた現地の通訳やその家族らはタリバンに殺される危険性がある>

サイゴン陥落でベトナム戦争が終結した1975年4月。南ベトナムにいたアメリカ人がヘリコプターで一斉に脱出するなか、ワシントンでは若き上院議員がこう主張していた。「1人だろうと10万人プラス1人だろうと、アメリカには南ベトナム人を救出する責務は一切ない」

救出計画つぶしの急先鋒だったその議員こそ現在の米大統領、ジョー・バイデンだ。

そして、20年に及んだ戦争の末に米軍がアフガニスタンから撤退し始めた今、バイデンは再びアメリカの良心が問われる二者択一に直面している。自国の軍隊のために働いてきたアフガニスタン人を見捨てるのか、それとも救いの手を差し伸べるのか。

アメリカに永住できる特別移民ビザ(SIV)発給を条件に、駐留米軍や多国籍軍の通訳などを務めてきた多数のアフガニスタン人とその家族。彼らは今、命の危険にさらされている。救出ミッションは時間との競争であり、煩雑な行政手続きとの戦いだ。

アフガンは再びタリバン支配下に

米軍と多国籍軍が撤退すれば、アフガニスタンは再びイスラム原理主義勢力タリバンの支配下に置かれかねない。今もSIVの発給を待っていた米軍の通訳が武装勢力に殺される事件が相次ぎ、通訳仲間らは不安を募らせている。

米軍に協力したアフガニスタン人とその家族へのSIV発給については、ワシントンでも米政府の対応の遅れを非難する大合唱が起きている。議員や退役軍人が手続きを迅速化するようバイデン政権に猛プッシュをかけているのだ。

下院外交委員会のメンバーである民主党のアミ・ベラ議員によると、現時点でSIVを申請し、発給を待っているアフガニスタン人はざっと1万7000人。手続きを迅速に進める具体的な計画がなければ、米軍の撤退完了までに発給が間に合うか「非常に心配」な状況だと、ベラは言う。

ベラが当局者と話したところ「早急に対処せねばという切迫感はあった」そうだ。「裏を返せば、それだけ処理に手間取っている、ということ。これから申請が急増するのは目に見えている。このままでは大変なことになる」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中