拡大する中国包囲網...英仏も「中国は対抗すべき存在」との認識に
HERE COMES THE UK
中国は外交・安全保障で「力は正義なり」政策を強引に推し進めてきた。政治献金やワクチン輸出を通じた影響力拡大キャンペーンしかり、サイバー攻撃や南シナ海における軍事拠点の構築しかりだ。米中関係の風向きがどうあれ、こうした中国のやり方は国際社会のひんしゅくを買わずにはおかない。
対中関係がいま最もこじれているのはオーストラリアかもしれない。今やこの国は最大の貿易相手国である中国と事実上の「経済戦争」に突入している。自国の政界への中国の影響力拡大を警戒して2018年に外国からの政治献金を禁止したのを皮切りに、自国の第5世代(5G)通信網から中国企業・華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の製品を排除し、新型コロナウイルスの発生源を明らかにするため独立した調査を実施すべきだとも呼び掛けた。
これに怒った中国はオーストラリアとの戦略経済対話の無期限停止を発表。オーストラリア産の農産物などの輸入を制限する措置を取った。
一方、南シナ海では今年3月、中国とフィリピンが領有権を争うスプラトリー(中国名・南沙)諸島のウィットサン(牛軛)礁周辺に中国の漁船団が停泊。フィリピン政府が退去を求めても居座り続けた。
フィリピン側にすれば、これは中国が12年にスカボロー礁を乗っ取った際に取った手口だ。オランダ・ハーグの国際仲裁裁判所はフィリピンの提訴を受けて、16年に南シナ海の境界線に関する中国の主張は根拠を欠いているとの判断を示したが、中国は知らん顔を決め込んでいる。
航空自衛隊が700回近く緊急発進
インドも中国と長年、ヒマラヤ地方で国境をめぐる争いを続けてきた。昨年6月にはインド北部のラダックで大規模な衝突が発生、インド兵20人が死亡した。インド側は中国軍が1962年の紛争勃発以来最大の猛攻をかけてきたと主張している。
日本は2019年、尖閣諸島(中国名・釣魚島)上空への中国の侵入に対抗するため、航空自衛隊が700回近くスクランブル(緊急発進)をかけた。20年には中国公船が年間333日も周辺海域を航行し、海上保安庁と海上自衛隊が対応せざるを得なかった。この威嚇のパターンは10年以上前から続いている。
ウイグル人や香港への弾圧問題で対中批判に及び腰だと欧米の一部で批判されているニュージーランドでさえ、態度を変えつつある。ジャシンダ・アーダーン首相は先日、最大の貿易相手国である中国との見解の相違を解決することは一段と困難になっていると発言した。
アメリカの対中政策には、さまざまな意見があっていい。しかし、他の主要国も地域の安定と航行の自由、国内の経済・政治、民主化運動、知的財産に対する中国の脅威を懸念していることは明らかだ。